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ニート×ニート

★ 「なあ、あんたいつ帰んの?」  二階建ての一階、奥、角部屋。そのボロいアパートの一室が俺の家だ。大家は叔父。身内のスネをかじって一人暮らし。  というか追い出されたというか、隔離されたというかなんか、俺は身内に嫌われている。  理由は簡単だ。ニートで働く気がないからだ。 「あー、家が家出したんだ」 「家が家出したんじゃねぇだろ、オメェが追い出されたんだろどうせ」 「そうとも言う」 「そうしか言わねぇよ!」  目の前で天井を見つめながらタバコを咥えているのは、容姿しか取り柄のないクソニートの男だ。  金髪色白顔面良し、そこそこ筋肉質。26歳同い年。頭は弱いが、俺もどっこいどっこいなのでなんとも言えない。 「ここにいるのはいいけどよ…家賃くらい払えよ」 「はあ?お前ここタダっつっただろ?」 「家主は俺な?ここにいたいなら俺のために働け」  そう言うと、そいつはニタニタと下品に笑う。せっかくの顔面が台無しだ。 「オレはお前のために働いてるぞ!」 「働いてんのはオメェのちんこだけだろ!!」 「こいつはオレの一部だろーが!?」 「食えねぇだろそれ!」 「デカすぎて?」 「死ね!!」  思わず頭を叩いた。タバコの灰が飛び散る。  そんなアホみたいな会話をしている俺は、牧修哉(まきしゅうや)。目の前のアホは雪村幸太(ゆきむらこうた)。  出会ったのは一昨日。  いつものパチ屋でのことだった。 『なあ、そっちの台もうちょいで天井じゃね?』  ユキはたしかそんな感じで話しかけてきた。  お互いに顔は知ってた。ほとんど毎日来てるから。  んで俺は答えた。 『天井までに金がなくなるのが先だな』  こういうのは運だ。そんでもって俺はいつもついてない。財布の中にはすでにレシートと飲み屋の名刺くらいしかない。 『じゃあこうしよう』  と、ユキはこんな提案をした。 『この台、協力して大当たり出そう。んでそれを元手に、こっちの台も大当たり出そう。そんで今日はハッピーに帰ろう、な?お互いに!!』  んでな、俺もアホだからさ、ノったんだ、その提案に。だって人間助け合いが大事だって死んだ父親が言ってたから。  が……、帰り焼肉食って帰ろうぜとか言ってたのがウソみたいに、二人とも財布がすっからかんになった。  右の台で出た玉が、見事に左の台に吸い込まれた。信じらんねぇよクソが。  その後なんか仲良くなって、お互いの傷を舐め合いながら俺んちで宅飲みして、なんか流れでヤッて今。みたいな。  正直顔がタイプだったからいい。アレもデカかったし直良し。  が、ひとつデケェ問題があった。  ユキはただのパチンカスじゃなくて、マジで家無しのクソニートだった。そのクセなんやかんや家事ができるんだから、追い出そうにも追い出せなくなった。  そんな感じで、俺らの変な同居生活は始まった。

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