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第12話
ピンクトルマリンのハート
あ、流されそう。
「マスター、ダメだよ。
俺の事、罪悪感だけでしょ?
乙女かもしれないけど、好きな人としなきゃ、いかんよ」
「ん、ちゃんとさとるが好きだよ。
愛してるし、籍だって入れたい。
田舎に帰るなら、店をそっちにしても構わない。
どこでだって良いんだよ、俺は。
お前が傷つきやすくて、わざとお調子者ぶって、こんなに、早く、逃げようとするとは思わなかったよ」
また、キスされた。
凄く、深く。
これ、ディープキスだ。
口の中に、マスターの舌が忙しなく動き回って、舌をきつく吸われた。
いま、色々ヤバい。
こんな感覚知らない。
「俺、好きなのかわかんないよ。」
むしろ、こんなんされたら、ちょろっと落とされそう。
「俺がさとるを好きだからいい。」
「賭けとかじゃなく?」
「あの日、俺はここに迎えに来て、あのクレーマーと鉢合わせしたんだよ。
常連のアホがお前のアパート教えたんだ。
軽くボコったからな。
この辺りじゃもう、どこにも入れないさ。」
クレーマーとして、店に来させた仕込みはしっかり、営業妨害だしなー。
「だから、あのクレーマー役の奴は、まあ、言わば、巻き込まれてるし、一応、謝罪ってので、チャンスをって書いたんだよ。」
ちょっと、絡まった糸だったけど、なんか、納得できた。
「あ、でも、なんでうち知ってたんだろ?」
「バカ!お前が、店で酔うといつもアパート名まで言ってたんだぞ!
気が気じゃなかったよ。」
肩を気にしてたけど、抱きしめられちゃった。
なんか、口元がグニグニ緩みそう。
胸板が、気持ちいい。
コテンて感じで、頭を乗せた。
横に来て、俺の肩をやんわり抱きしめてくれた。
いい雰囲気の中、バイブが響いた。
あ、悪ノリさん。
電話、勝手に出るしw
「カイのアパートに今いる。
退院したんだ。
この部屋は引き払うし、あのアホが来たらヤバいんで、俺が連れて行く。
俺のだから、口出すなよ」
う?
いつ、マスターのモノに?
なんか向こうで、悪ノリさんが喚いてる。
でもさ、悪ノリさん、いつも酷いことばっかだったし。
俺に好かれる要素ないと思わね?
小学生並の恋愛感なの?
無理だから!
「あ、母さんに連絡させて。」
田舎に帰るのは決定事項。
もし、いま、マスターと抱き合えたらいい思い出にする。
でもさ、この体じゃ、無理w
「あ、母さん?
退院してきたけん、連絡したんよ。
こっちの部屋やら引き払ったり手続き終わったら、帰るけん。
ん、そよ、いま、あんときに母さんがたたき返したマスターとおるけん、心配なか。
なんとか動いて、やるけん。」
方言丸出しで電話を切った。
「さとる、俺も、店をそっちに移すから、一緒にやってくれ。」
マスター、マジなの?
俺、ちょろ過ぎじゃね?
「お前の方言て、可愛いな。」
田舎行ったらみんなこうなんだけど。
「俺、浮気とかされたくないし、それなら最初から付き合わない方が良いのかも」
「え?俺浮気とかしないよ。
一途だしな。」
「田舎行ったら、みんな、方言だし、
みんな可愛いく見えたら、俺なんかブスだし、捨てられちゃうじゃん」
「お前なー、俺が若くもないのに、捨てられるのは、こっちだろ。」
イケメンマッチョのくせに何言ってんだΣ(-᷅_-᷄๑)
「お前が求めてきても、勃たないかもしれない。
そうしたら、お前が若い奴に走るかもしれないだろ」
びっくりだった。
長身イケメンマッチョで、怖いもんなんか無いって思ってたのに。
そっか、体って衰えるけど、俺たち死ぬまでゲイなんだよな。
なんか、可愛くなった。
「じゃあ、浮気しない?」
「しない」
「え、っと、好き?」
「好き、愛してる」
「そっかー」
にやにやしちゃう。
嬉しくて、ふふって笑える。
「籍を入れないと、俺の方が安心できない」
マスターは、座る場所を布団に寄りかかってる俺の後ろに回って、後ろから抱っこされちゃう感じに足の間に入れた。
適度に硬いから、寄り掛かりやすい。
なんか、甘い。
「で、返事は?」
俺のお腹のとこで、手を組んでる。
その手を吊ってない左手でそっと触る。
マスターの指が、俺の指にしっかり絡まると、もう、抗えなかった。
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