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第13話

ダイヤのハート 抗えない。 こんな気持ちが湧くなんて思ってもいなかった。 絡めた指が熱くて、恥ずかしくて、嬉しくて。 27歳になって初めての恋なのかも。 「返事は?   さとる?」 後ろから、こめかみとか項にちゅってされる。 「ん、なんの?」 「そこから?」 だって、ぼーっとするし、にやにやしちゃうのは、もう好きだから。 「うそ、好き」 下向いちゃう、 顔見れないし! 後ろにいるから見れないけどさ。 「なんてね」 ごまかした。 だって、どっきりとかだったらやだし。 「はぁ~、もうね。  諦めて。  さとるは俺のものだから」 「かもね、大事にとってあったファーストキスもマスターに奪われちゃったし」 「え?あれ、ほんとだったのか?」 「うん」 何もカモが初めってって、めんどくさいって言われるし、ちょっと怖い。 最初で、最後の男っていいな、なんて呟きが聞こえる。 部屋の解約も、移動もマスターが全部するからって、マスターのマンションに行くことになった。 えっと、マンション、高層だよ? こんなとこ住んでるって聞いてないよ? 超後出し、やめてー!!! マスターの本名と年齢、初めて知った。 本田 一志(かずし) 39歳 俺より一回り違ったよ。 「えっと、マスター、俺なんかに好きとかいうのおかしくない?」 「おかしくないし。  事故の時、付き添いできなかったのが、地味に来てるんだよ  目の前で轢かれて、このまま目を開けなかったらって。  俺は、もう、絶対にお前から離れないって決めたんだよ」 「え?事故の時誰もいなかったって言われたよ?」 「身内じゃないってことで、通行人扱いだよ。  ただの目撃者で警察に話すくらいしか、立場的にできなかったの。  好きな奴が目の前で、しかも、あんなことあって、泣かせて、死んだかと思ったよ。  もうね、絶対に後悔したくないの。  囲って、俺の見える範囲で甘やかして、一生、一緒にいたいんだよ」 これって、漫画で言うスパダリ案件? 悪ノリさんから、しつこく着信が入ってるんだけど、 マスターは出なくていいって、ちょっと不機嫌だし。 「マスターが、出て。  そしたら、いいでしょ?」 「どう話しても、あいつ納得しないだろうし、  いいから、ほっとけ」 マスターの部屋は単身者用の区画なのに、広い! 玄関も、俺のアパートのキッチン分くらいあって、凄いおしゃれ。 なに、この格差。 これで、同棲の痕跡とか残ってたら、立ち直れないくらいには、心が入り込んじゃってる。 だから、しばらく一緒にいるだけって予防線を張っておこう。 リビングと寝室と、サニタリー関係の部屋と、もう一部屋あった。 ベッドも。 なんか、ちょっと心が痛んだ。 そりゃ、そうだよ。 いなかったわけないし、本名だって歳だって、今知ったくらいの付き合いしかしてこなかったんだし。 大丈夫、手続き済んだら、俺には帰るところがちゃんとある。 とりあえず、必要以上にこの部屋を知る様な事はしないって決めた。 「マスター、今日お店は?  今頃って寝てる時間じゃないの?」 「ん、まぁ、大丈夫だ。  仮眠はどっかで取る。  お前とやっといられるのに、寝たくない」 俺のスーツケースが2個とスーツが3着、主寝室のクローゼットに入れてあるから、着替えを出すって。 「スーツケース、マスターが持っていてくれたんだ。  あ、でもあの時ぐちゃぐちゃに、とにかく突っ込んだから  着れるのあんま無いかも」 中身を見たら、案の定・・・しかも、投げたりしてるから、ケースにも傷が凄い。 なんか、俺みたい。 中身ぐちゃぐちゃで、外は傷だらけで。 ちょっと泣けてきた。 こんなに涙腺弱くなかったんだけどな。 肩がこんなだから、前開きのシャツで着れそうなのを探してると、マスターが自分のシャツを出してきた。 身体も二回りはサイズが違うから、でかい。 腕通したりするの大変だから、助かるけど。 一度吊ってる腕を抜いて袖に入れる。 これ、肩回すからスゲー痛い。 下にだらんと下げて着れればマシなんだけどな~。 なんとなく、洗剤の匂いに交じってマスターがいつも使ってるコロンの匂いがする。 考えたら、コレ! 彼シャツじゃん!! ぶかぶかで、萌袖状態って ブスがやっても似合わないってww 袖まくり上げたら、関係ないしね。 着る物ないし、開き直るよ。 「マスター、あんがと。  大きいから助かる」 27歳が若者の萌なんかやってもね。 そこはさらっと流す方向で。 「おぉ、いいな。  好きな子が、俺の服着てるって視覚的にヤバいわ」 イケメンの笑顔ってイイネ! 「体が辛かったら良いんだけど、  今日、一緒に店に行ってくれないかな?」 テレテレしながら、マスターが言う。 「痛み止め飲んでるから、お酒は飲めないけど、  ちゃんと挨拶はしないとね。  視覚的に、自分らのやった事反省してもらおうかw」 俺はちょっと自分の包帯だらけの体を、武器にすることにした。

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