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第20話

ビー玉のハート 羽田に向かうと、悪ノリさんが来ていた。 んー? なんで? 「さとる君、傷はどう?  こんな奴とは別れちゃいなよ。」 また、酷いことを言う。 「別れないし。  なんでそんな事言うかなー」  「だってさー、兄貴ばっかりずるいしなー  あんなクズ野郎にさとる君が傷つけられて、黙ってられるかよ!  オヤジだって、あの場にいて、めっちゃキレたしな」 なに、それ 壮大な後出し来ましたー!! 「え?  えー!  兄弟なの?  似てなくもない?かな?」 「知らんかったかー、弟よ、俺  ちなみに、オヤジは店によく来てる紳士風な、あだ名が部長。  社長だけどな。」 蓋を開けたら、あの店が入ってるビル自体、部長さんこと、かずしさんたちのお父さんの会社のビルで、その飲食店部門の偉い人が悪ノリさん。 かずしさんは、店のオーナー。 うん、まぁ、うん。 部長さん、お父さんだったかー・・・・。 そういや、凄い慰められてて、優しい人だった。 「あ!そうだ!  部長さんから、魔法使いになったら、おいしい物食べに連れて行ってくれるって!  魔法使い目指さなきゃ!」 ゲラゲラ笑いながら、二人に言うと、そんなに待てないとか待たせるなってw 飛行機のビジネスクラスを悪ノリさんが用意してくれてた。 めっちゃいい人w とはいえ、新しい支店事務所の視察って名目もあるから、だけど。 悪ノリさんが飲食部門の進出ってことで、一志さんの店舗とは別に支店を出すんだって。 それって完璧に、自分もこっちに来る計画だよね?w 足元広いし、椅子は豪華だし。 って喜んでたら、隣でちょっと不機嫌なかずしさん。 「帰りはファーストクラスにしよう」 何に張り合ってんの!www 「あのね、俺、病院で痛くて苦しくて何も思い出せなかった時も、かずしさんを見ると、悲しくなったり不安だったりしながらも、居てくれるだけで安心できたんだよ。  誰が来ても、何にも心は動かなかったのに、ね。」 「さとる、本当に苦しめてごめん」 店でしていたように、内緒話をする。 耳をはむはむするように。 「お母さんに、挨拶したら、抱いてね」 「!!」 じゃないと、本当は不安なんだ。 傷は多分残る。 この傷を見るたびに、かずしさんが後悔するんじゃないかって。 だから、お金を貯めて形成外科で綺麗にするつもり。 それは、あとから話してみる。 「あ、でも、その前に母さんや姉さん、弟にぶっ飛ばされないといいな」 結構、俺、父親以外には可愛がられてんのよ? ゲイ向け的にはブスだけど、ジャニーズとは言わないが、そこそこうちの姉的にはいいらしい。 弟は、かっこいい、母さんは美人な肝っ玉母さんだったし、みんな彫が深くて外人みたいなんだよね。 俺が一番、日本人ぽい。 「もしかしたら、俺より弟の方を好きになっちゃうかもね。  そしたら、言ってね。  おれ、ちゃんと諦めるし。  それこそ、ちゃんと逃げるからw」 冗談交じりだけでど、本当の心配をした。 弟はかっこいい、だから、俺じゃなくて弟を好きになるやつばかりだったし 今の俺は、凄い傷物。 また、逃げたくなってきた。 「さとる、俺はどんなにかっこいい弟でも、さとるが可愛いと思うのはだめか?」 「それが長く続けばいいな」 最初はみんなそう言うんだ。 東京へ出て、初めて俺ってブスなんだって知ったくらい、どうしようもなく自分に甘かった。 「また、逃げようとしてる」 「バレたか」 笑ってごまかしたけど、抱いてもらえない身体はこんなにも不安なんだ。 空港へついて、すぐ、弟が迎えに来てた。 身長も俺より高いし、顔もかっこいいし、きっと、また。 「兄ちゃん!」 イケメンの弟がめっちゃ手を振っていた。 横に小さい赤ん坊を連れた女性と・・・・? 「えぇー!!!!  お前、結婚してたんか?」 「おう!出来婚や!  兄ちゃんのおかげで、俺も正直に生きてみたら、こうなって死んだ父さんも最後は折れたよ」 「え、じゃぁ、バイ?」 「違うけん!  兄ちゃんに見る目がなかったけん、俺がぶん殴って追い払っとったんよ。  感謝してほしいぐらいや!  兄ちゃん、ストーカーばっか連れてきよるけん、みんな気が気じゃなかったん」 「え?はい?  ストーカーなんかおらんかったよ~  モテんから、いっつも振られてばかりやったけん、東京ならって出たんよ~」 ぼんやりすぎるって、弟のくせに俺の背中殴った。 「やっぱりな・・・・。  お前はバカだったんだな。  うちの弟がブスブス言ってるから、それを信じたんだろ?  お前、他で、ブスって言われたのって、敵意のあるやつだけだろ?」 「えっと?  そうなんかな?」 「っと、その前にその傷!  どうしたん、これ!?」 ぐいって顔を持ち上げられた。 「痛い!痛いけん!やめれ!」 「あんた、うちの兄ちゃんの傷、どういうことか、説明してくれん?」 弟の怒気って初めて見たかも。 いっつも、兄ちゃん、にいちゃんって笑顔がかっこいいとかしか思ってなかった。 かずしさんが、一通り説明すると、思いっきり殴った。 「兄ちゃん、帰るぞ!  こんなやつ、うっちゃってしまえ」 「かずしさん!  大丈夫?」 「こいつはダメや!」 「航!謝れ!」 空港の往来で大ゲンカになりそうだった。 「ま、まて、さとる。  わたるくんも、場所を変えよう。  ここじゃ通報される」 かずしさんが殴られた頬を摩りながら、俺らを止めた。

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