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第21話
金剛石のハート
弟の航が迎えに来てくれた車に移動した。
移動するまでが大変だった。
航の言い分は、かずしさんがちゃんと切ってれば、こんなことにならなかった、だ。
まぁ、それは、俺も思う。
正直、いろいろめんどくさがらずに、ちゃんとして欲しいと、思う。
元彼の存在は、かなりのトラウマになった。
元彼とのセックス事情なんて、聴きたくなかったし。
こんな傷跡が残ったら、余計に思い出されちゃうよ。
「本田さん、あんた、責任もって兄ちゃんの傷、綺麗にしろ!
こんな傷見るたびに、嫌なこと思い出させるな。
そんくらいの配慮はしろよな?」
航は俺の気持ちがわかってくれてて、代わりに言ってくれた。
航、兄ちゃん、お前の嫁になりたかったわ!
って、嫁いるじゃんw
「さとるの傷は形成外科手術を受けてるから、多分分からないくらいになる。
それでも残ってたら、美容整形ですべてを取る。
いくらかかっても構わないって決めてる。
だから、今はそっとしておかないとせっかくの治療が台無しになるんだ」
え?もしかして、抱いてくれない理由ってそれ?
てか聞いてないよ、俺。
そんな手術されてたんだ。
嫁さんは可愛い子で、赤ん坊は女の子だった。
姪っ子になるんだな~
俺の事情も知ったうえで、嫁に来てくれたんだって。
「お義兄さん、可愛いけん、みんなかまいたがるのわかる~」
「えぇ?俺、ブスよ?
ゲイ的にはモテないけん。
それに、いまこれやし。」
こめかみ辺りの傷を指してみた。
「とりあえず、本田さん、うちの母さんと姉さんにも殴られてください。
うちの兄ちゃん、評判の子やったけん、こんな傷物にされて、特に姉が鉄拳下すけんね」
「覚悟してます。
前の交通事故の時にも、お母さまには追い返されてますから」
「あぁ、母さんに一喝されたんは、本田さんだったんねwwww
うちに帰ってきて、怒りまくってたわ」
「正確には、兄弟で、だ。
特に、弟が、」
「あー、あれ、悪ノリさんもいたんだ。
凄い響き渡ってた」
なんか、懐かしい。
色んな事がありすぎて・・・
流れる景色を見るだけで、なんだか涙が出てきた。
悔しいな、俺もかずしさんの初めての男になりたかった。
12歳も違うんだし、それこそ無理だってわかってるけど。
田舎だから、敷地だけは広い我が家。
親父に勘当されてからは、時々、こっそり帰って来るだけだった。
頑固な親父で、死ぬ間際まで、俺を許さなかった。
ものすごい形相で睨みつけるだけして逝った。
小さい頃の事とか、まったく思い出せなかった。
良く、死んだ人のいいところばかり思い出すっていうけど、俺は、思い出せない。
酷い人間なのかも。
自分勝手な人間だから、嫌だったことがたくさん思い出されて、逃げる。
命が無くなったんだってそれしか思えなかった。
「母さん、ただいま~
兄ちゃんたち連れてきた~」
奥の方から、初孫を迎える言葉と共に、母さんが顔を見せた。
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