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第61話 決めた
「ごめんなさいね、こんな話しばっかり。…それで、もしよかったら、お風呂使う?」
珈琲の器を片付けながら、美奈が言った。
‼︎
俺そう言えば、風呂に入ってなかった!
やっぱり臭かったかな…?
智樹は自分の体の匂いを確認するように、両腕を交互に嗅いだ。
「匂いはしないのよ。ただ、湯船に入ると気持ちいいし、リラックスできるでしょ?それに入浴剤、いろんな種類あって楽しいわよ」
どこから持ってきたのだろうか?
美奈は温泉の湯と書かれた沢山の入浴剤を持っている。
「本当に沢山あるんですね」
智樹が言うと、
「そうでしょ。乳白色がオススメ」
入浴剤の中から、美奈は何種類か取り出した。
「タオルはね、洗面所の洗濯機の上には置いておくのと、着替えは少し大きいと思うけど、環の使って。それも洗濯機の上に置いておくわね」
「でも、そこまでしていただくのは…」
ちょっと気が引ける。
智樹は遠慮する。
「遠慮なんてしないで。環なんて1日何回もシャワーしてるんだから。もう洗いすぎて、そのうち皮膚薄くてなるんじゃないかしら?」
美奈の言葉に智樹はまた笑い、
「じゃあお言葉に甘えて、お風呂いただきます」
と、美奈が持っている入浴剤を一つ手に取った。
「お風呂、ありがとうございました」
環のブカブカのジャージーを着、出してもらったタオルを肩にかけ、スッキリした表情の智樹が美奈の居るダイニングに入った。
「湯船、スッキリするでしょ?私は考え事する時、よく湯船に浸かるの。じゃあ、色々と考えられたり、気持ち落ち着かせたり出来るのよ」
キッチン内で何か作っていた美奈が手を止め、智樹の方をじっと見、そして微笑んだ。
確かにシャワーだけの時より、スッキリする。
「じゃあ、お風呂に入った事だし、お昼にしない?オムライス、食べられる?」
美奈はフライパンを智樹に見えるように持ち上げる。
「はい!大好きです!」
智樹が元気に答えると、美奈はフライパンをガスコンロの上に置き直した。
「因みにオムライスのライスは、ケチャップチキンライスです。って言っても、チキンの代わりはウインナー。横着しちゃったけど、許してね」
また美奈が『えへっ』と笑って誤魔化した。
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