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第60話 珈琲

ダイニングのソファーに通された智樹は、美奈に言われるがままソファーに座る。 「飲み物何がいい?えーっとね、あるのは珈琲と紅茶とココアとジュースはファ○タと、コー○と、ジンジャー○ルあるわよ」 美奈が笑顔で智樹を見ると、 「珈琲で…お願いします」 智樹は美奈の手を煩わせないようにと、美奈が飲みそうな物を答えた。 「やっぱり午前中の休憩には珈琲が1番よね」 そう言って美奈は、キッチンの中に入って行った。 ……。 智樹は今どうなっているのか、フル回転で考えた。 夜中に早見さん出かけて、ファミレス行って、夜景と日の出見て、朝帰りして、雅樹と喧嘩して……。 雅樹との喧嘩を思い出した智樹の中の怒りが、また溢れてきそうになる。 今はその事は置いておこう… 家を飛び出したはいいけど、行くとこ無くて路地裏にいたら…… 今、環の家(ここ)にいる。 もうめちゃくちゃだ。 智樹が頭を抱えていると、 「珈琲どうぞ。お砂糖とミルクはこれね」 2人分の珈琲セットを美奈が智樹の前に置く。 「この珈琲の豆、環が買ってきてくれたんだけど、美味しくて。銘柄はねー……、えーっとね……、忘れちゃった」 えへへと美奈が笑った。 なにそれ。 美奈の笑顔につられて、智樹も笑った。 「あの俺…」 とりあえず、今までの事、言えるとこまで言わないと。 智樹が話し始めようとした時、 「猫舌じゃなかったら、冷めてしまう前に珈琲どうぞ」 美奈が勧めた。 珈琲を飲んでいる最中は、智樹は美奈から環の無茶話しを聞いた。 小さい頃、鬼ごっこで捕まりたくなくて、街路樹に登ったら折れて落下したことや、小学生の時は、よくランドセルを家にわざと置いて登校し、美奈が先生によく呼び出されたことや、サンタは『いる』『いない』で友達と殴り合いの喧嘩をし、喧嘩をふっかけた環が勝ってしまったことや…。 とにかく規格外の事件話しばかりだ。 そんな話を聞いていた智樹は、今朝、雅樹との喧嘩の事はどうでもよくなってきていた。 「とにかく環は、頼りになるのか?ならないのか?本当にわからない子なのよ」 一通り話し終わった美奈は困った顔をする。 『俺からみたら、美奈さんは天然さんで可愛いらしいですよ』 そんな言葉が智樹の頭に浮かんできて、言ったら美奈はきっと楽しそうに笑うだろうなと思ったが、智樹は言うのをやめた。文字(ルビ)

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