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第63話 眠い…。
あー!枕ーー‼︎
枕の魅力に心奪われた智樹は、すぐさま枕を受け取り顔を埋めた。
「環の部屋で寝てきたら?一応、枕と布団は客人用だしカバーは全部洗ってあるから、安心して」
智樹の後ろから顔を覗かせたのは美奈。
「へ?」
素晴らしすぎる提案に、智樹の頭がついていかない。
「眠いんでしょ?ソファーよりベッドの方が疲れとれると思うわよ」
「……でも……」
至れり尽くせりの勧めに、智樹は戸惑う。
「ソファーで智樹君が寝ちゃったら、私、お茶する場所なくなっちゃうしね」
美奈は困った顔をしていたが、それは『智樹が環の部屋で寝る口実になるように』と言った、美奈の気遣いだということは、智樹にはすぐにわかった。
「じゃあ、お言葉に甘えて…」
今日2度目のセリフを智樹が言うと、
「環の部屋、案内するわね」
美奈が優しく微笑んだ。
「どうぞ好きに使って。トイレは斜め向かいにあるからね」
それだけ言うと、美奈はダイニングに戻って行った。
男子の部屋なのに、室内はとても綺麗に整頓されている。
大きな家具は机に椅子、ベッドにローテーブル。
そこに一段と大きな本棚があり、そこには、
へー、医学書ばっかり。
沢山並んだ医学書の一冊を、智樹は手に取った。
心臓関係の本?
よく見ると、難しそうな心臓関連の本が並んでいる。
難しそうだけど、面白そう。
智樹は選んだ一冊を手に取り、ベッドに寝転びながら本を開いた。
本のもくじを見ると、心臓に関する病名と症状。
治療方法に手術、移植、ドナーなど、専門的な事柄が書かれている。
随分専門的だな…
本を読もうと1ページ目を智樹はめくったが、次の瞬間、本を持ったまま深い眠りについていた。
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