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第10話 7月5日 ⑥

薫、なにやってんだよ。 もう夜だぞ。 夏なのに、外、真っ暗。 『生クリームってさ、暑いと溶けるの早いんだぞ』って俺、言ってしまったよな。 ごめん。 俺が悪かった。 謝るから、 目、開けてくれよ… なぁ、薫………。 冷たい霊安室の、冷たいベットの上に寝かされている薫の顔は綺麗で、 まるで眠っているようだった。 だが、もう二度とこの目が開かれることはない… だが、晶は信じられなかった。 晶がそっと薫の頬を触ると、冷たくて…… ……………………。 言わなきゃよかった… 言わなきゃよかった。 あんな事。 あんな事言ったから、薫も一緒に行っていた神谷先輩も急いだんだ。 だから近道になる、あの交差点使ったんだ。 薫と神谷先輩は信号待ちをしていただけ。 なのにどうして… トラックなんかが歩道に突っ込んでくるんだよ‼︎ 薫はいいやつだ。 これから先、楽しいこと沢山やって、大好きな神谷先輩とも仲良くやっていくんだ。 たまに俺と遊んだりしてくれたりしたのかな? なのに、なのに、それはもうできない。 晶はその場に力なくしゃがみ込んでしまった。 俺がいけないんだ。 誕生パーティーお願いしたから、 ケーキ取りに行くの急がせたから。 俺が1人、薫の家にいたから…… 俺がいたら何かできたかもしれない。  薫や神谷先輩を守れたかもしれない。 晶の頭に『かもしれない』と、自分に対する怒りが込み上げてくる。 「ごめん、薫…。俺が悪かった…。だから、目、覚ましてくれよ…」 薫の死後はじめて晶の目から涙がこぼれ出し、それは嗚咽と共に止まることを知らず、 晶の泣き声は霊安室に響き渡った。

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