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第25話 デート ②

『駅前に10時』 これって本当は、薫と先輩と俺と遊びに行く時の、毎回の集合場所と時間。 いつもと同じような景色にしたら先輩、思い出すかも。 あと知ってました? 先輩、いつも待ち合わせ時間より10分早く来てるって、俺たち知ってたんですよ。 でも、先輩、何故かそれ気づかれたくなかったのか、待ち合わせと違う改札口で時間潰してましたよね。 薫と2人いつも『なんでだろうね?』って、話してたんです。 今日の先輩は…………… 「先輩⁉︎ここ、待ち合わせの改札じゃないですよ」 神谷は居た。 待ち合わせの時間より10分早く、待ち合わせとは違う改札口に。 先輩、どうしてここに? 思い出した? 今までのこと… 「おはよ。そーなんだ。出かける準備早くできたから、待ち合わせの改札に行ったんだけど、なんだかしっくりこなくて…。で、ここにきたら落ち着いた。なんでだと思う?」 神谷が晶に聞きかえす。 それは…… 「先輩、前から待ち合わせの10分前に駅に来て、この改札口で時間潰されてたんです…。何か思い出されましたか?」 「思い出したというか…、そうしたいって思ったかな?」 神谷は親指と人差し指で自分の顎を摘み、首をかしげた。 思い出し始めた? 嬉しいことなのに、何故だろう、胸がチクっとする。 全部全部思い出して欲しい。 薫のこと… でも、薫のこと思い出したら 薫が、 恋人が いないことがわかってしまう。 俺が嘘ついてることも… 幻滅される? 俺こんな酷いことして、 先輩に嫌われたくないって思ってしまってる… 最低だ。 「松原…、大丈夫?」 考え込んでいる晶の顔を、神谷が覗き込む。 「!大丈夫です。それより行きませんか?映画館」 「そうだな…」 そう言った神谷の顔が、少し寂しそうだった。

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