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第71話 『手紙を書いて、君に送るよ』
泣くな‼︎俺‼︎
薫からの大切な手紙、汚れるだろ…
泣いたら薫、心配するだろ?
『パーティー、楽しくなかった?』って思うだろ?
あんなに楽しそうに企画してくれてたの、無駄にする気かよ。
あー、でも涙、止まんない。
薫、絶対俺泣かそうとしてるな。
薫の予想通り、泣いてしまったじゃないか。
どうせ俺のそばで
『晶泣いた‼︎大成功‼︎』って喜んでるんだろ?
悔しいけど、薫の思い通りになったって認めてやるからさ…
認めてやるから、
なぁ、薫。
ちょっと出てこいよ。
ほんのちょっとでいいんだ。
出てきてくれよ。
それでさ、
『そんなに泣くとは思ってなかった』
って笑ってくれよ。
俺さ、意外と涙もろくて、泣き虫なんだ。
だから薫、この責任とって、慰めてくれよ。
なぁ、薫……
お願いだよ………
「……。そばにいるから…。俺はずっと晶のそばにいるから…。長谷部の分も……」
嗚咽を我慢する晶の肩を神谷が抱き寄せる。
「俺、酷いこと…しました…。薫の気持ちも気がつかず、先輩の気持ちもズタボロにしました…。俺は、薫や先輩にそばにいてもらう権利なんてないんです……」
見ようとしてなかった。
2人の気持ちを。
自分1人が、苦しいと思ってた。
でも、2人を苦しめてたのは俺だった…
「なぁ晶。長谷部はそんな事気にすると思うか?俺は思わない。全部わかってると思うぞ。あいつは…」
「‼︎…わかって……る?」
「長谷部と晶の仲って、そんなに浅かったのか?」
「…」
「それに晶が長谷部の立場なら長谷部の事、恨むのか?」
薫のことを恨むなんて、ありえない。
たとえどんなことがあっても。
晶はブンブンと頭を横に振る。
「じゃあさ、長谷部も同じだって。俺は晶のそばにいられたら、それだけが…、それが一番の幸せだ。だから、権利とか言うな」
「…、でも…」
「俺のそばにいてくれ…晶…」
愛しい人を、
愛している人を見る神谷の目には涙が溜まり、
はらりとこぼれ落ちる。
「愛してるよ、晶。晶以外なにもいらない。だからそばに…、晶のそばにいさせてほしい…」
神谷は晶の左手を手に取り、薬指にキスをする。
「俺もです。先輩…」
晶も神谷の左手薬指にキスを落とした。
薫。
薫はスマホ、なかなか見ないから、先輩と行った時の写真はプリントアウトしてさ、
多分、メールもなかなか気付かないから、
手紙にするよ。
だから薫。
『手紙を書いて……、君に送るよ』
ー終わりー
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