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第16話 蓮からの電話 ①

蓮は会社の人にも、元彼を紹介してたのか… 俺は飲み仲間なのか… なぜ… どうして… どうして… どうしてって… 俺が蓮に釣り合わないのはわかってるじゃないか… 大山達の前から急いで立ち去ってから、林が言った言葉が頭から離れない。 『チーフと佐々木さんって、飲み仲間なんですよね』 『チーフ、彼氏さんと別れられてから、私たちの飲みの誘いも来てくださってたのに、最近は一人飲みをされるみたいだったので…』 俺だって、蓮との関係を聞かれたら、『飲み仲間』と言うかもしれない。 でも、蓮の元彼の事、会社の人は知ってたなんて… ショックが大きすぎて、あれからずっと同じことを考えてしまっている… そんな事を考えているうちに、真司は自宅に着いていた。 家の鍵を開け部屋に入ると、部屋の電気もつけず、虚な瞳で鞄を適当なところに置き、スーツのままベットに倒れ込んだ。 胸が苦しい… 蓮に会いたい気持ちと、 今は会うのが怖い… という、気持ちが入り混じっていた。 どれぐらい、ベットに倒れ込んでいただろう、 真司の携帯がなった。 発信者は、蓮だ。 電話をとるか…とらないか… 迷っている間に、着信は止まる。 いつもなら、蓮の電話はすぐに出ていた真司だったのに… また、すぐに蓮から電話がかかってきた。 何度かの呼び出し音の後、真司はゆっくりと携帯に手を伸ばし、通話をタップした。 『もしもし、真司。今大丈夫?』 蓮の声と、周りの賑やかな音が聞こえる。 「…ああ。家だよ。蓮は店?」 真司は賢明にいつも通りに話しかける。 『店。でも、もうすぐ帰るよ』 真司は時計で時間を確認すると、飲み会から帰るにはまだ早い時間だった。 「まだ早いのに、大丈夫なのか?二軒目とかあるんじゃないか?」 『…断ったから大丈夫…真司、今日、大山君と林さんに会ったって聞いたんだけど…』 蓮の言葉に真司はドキッとした。 「あったよ。いい人達だね」 真司は出来る限り元気な口調で話す。 『うん……。真司、今から会えない?』 「‼︎でも今日は…」 しまった! 蓮からの咄嗟の誘いに、反射的に断ってしまいそうになった。 真司は蓮に会いたくないわけではなかった。 でも、真司は蓮とあった時どんな顔をしてしまっているのかが、不安だった。 もう少し、落ち着いてから会いたかったけど… 「会おう。今から蓮の家に行くから、気をつけて帰ってきて」 『今日は俺が真司の家に行きたいんだけど、行かせてくれる⁇』 蓮の思い詰めた声と、予想外のお願いに真司は一瞬躊躇する。 でも、断る理由もない。 「いいよ。俺の家で会おう。俺の家、食べ物何にもないくて…チャーハン作っておくから、あとは惣菜でもいい?」 元気のない蓮が、少しでも落ち着けるよう、真司は優しい口調で話しかける。 『真司のチャーハン食べられるの嬉しいよ。ありがとう』 少なからず蓮の声が明るくなって、真司はホッとした。 「電車に乗る前電話くれる?蓮が駅に着くぐらいに迎えに行くよ」 『ありがとう、真司…愛してる』 真司は蓮の言葉に、どきっとした。 でもそれは、昼間とは少し違う感じがして… 嬉しい気持ちと、少し胸が苦しい感じがした。 「俺も愛してるよ…蓮」 真司の本心だったが、蓮にそう言うと、何故だか切なくなった。 お互い後で会おうと電話を切り、真司は複雑な気持ちになっていた。

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