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第18話 蓮からの電話 ②
30分ほどして蓮から電話があり、真司は駅まで徒歩で迎えに行った。
真司が駅についてしばらくすると、改札から出てくる蓮の姿を見つけた。
改札を通り抜ける姿も他の人とは違って見える。
やはり真司は蓮を見つめるたび、胸の高鳴りを感じていた。
改札を出て、辺りをキョロキョロ見渡す蓮のそば真司はに駆け寄る。
「飲み会大丈夫だった⁇」
駆け寄ってくる真司を見て、蓮は嬉しそうに微笑む。
「大丈夫。急に会いたいだなんて、ごめん…」
「俺も会えてよかったよ」
蓮に直接会うと、真司はさっきまであったドロドロした気持ちなんて消えていった。
蓮には蓮の気持ちも事情もある。
それに俺自身、それについて聞いて今の状況が悪くなってしまうと思うと…
聞くのも知るのも怖い。
今は蓮の隣にいれるだけ。
それだけでいい。
真司の家は1DKのマンションで必要最低限の物しか置いていない。
この家を選んだのも、駅近で仕事場からも近い、家賃が安く、大家さんが親切だったから。
この物件が出た時、すぐさま前のマンションから引っ越したぐらいだった。
仕事帰り野宮などと飲みに行くこともあったが、特に予定がない時は、すぐに部屋に帰り、たまに自炊をし、好きな映画やドラマを観るのが真司の楽しみでもあった。
「蓮、適当にその辺座ってて、今からチャーハン炒めるから」
さっきコンビニで買ったビールを冷蔵庫にしまいながら、真司は蓮を促す。
「俺も手伝える事ない⁇」
鞄を置いた蓮が真司の方に近づいてきた。
「いいよ今日は。初めて蓮が家にきてくれた日に手伝わせられないよ」
真司はフライパンを振る。
チャーハンは真司の得意料理の一つ。
真司自身、料理全てが得意な訳ではなかったが、大学に進学する際、真司は一人暮らしをすることになり、自分の好きなメニューはぐらいらすぐに作れるようにと、母親に教えてもらってきたのだった。
チャーハンができると配膳し、真司は蓮のスーツの上着を預かった。
俺の家で、俺が作った料理を蓮と一緒に食べる。
なんだか一緒に住んだら、こんな感じなのかな…
「一緒に住んでたら、こんな感じなのかな…」
嬉しそうに微笑みながら、蓮がボソッと呟いた。
「え⁉︎」
真司が驚いて目を見開くと、蓮は一瞬ぽかんとした表情をしたが、すぐに状況を把握したのか、顔を真っ赤にして、
「ごめん‼︎なんでもない…いただきます」
慌てて蓮はチャーハンを口に運んだ。
今、蓮はなんて…?
もしかして、俺と同じことを考えてた?
「真司、チャーハン美味しい」
真司は自分が作ったチャーハンをパクパク食べる蓮の姿を見つめる。
かわいい…
「蓮の料理にはかなわないよ…あ、そうだ。蓮、今日泊まって行くだろ?」
「‼︎」
真司が何気なく言った言葉を聞いた蓮は驚き、目を見開いた。
「…俺…真司の家に、泊まっていって…いいの?」
「うん」
「朝まで一緒にいていいのか?」
「蓮さえよければ」
「…一緒にいたい…」
真司には、蓮の目には少し涙がたまって見えた。
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