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第38話 後輩、松野

真司が店に着いたのは、もうお昼となっていた。 「すみません。遅くなって…」 「いいよ。災難だったね…って、佐々木くん、髪切った?」 「……あのー。ちょっと伸びすぎてたので…美容院のオーナーにお任せしたら、こんな事に…」 やっぱり仕事には、この髪型はダメかな… もし、ダメなら今日にでも切りに行こう… 「いやー。私はいいと思うよ」 「佐々木、似合ってる」 上司にも野宮にも褒められ、真司は胸を撫で下ろす。 なぜなら、真司は蓮が褒めてくれたこの髪型を変えるのは残念だったからだ。 しばらくしてお客との内見を終わらせ帰ってきた松野が、真司を見て一瞬固まった。 「先輩…髪切ったんですか?」 俺が髪を切るのが、みんなそんなに意外なのか⁉︎ 店のみんなから質問され、今日何度めかの説明をする。 「その美容院のオーナーさんに感謝ですね」 「その言い方って…」 松野に皮肉を言われたかと、さすがの真司もムッとして言い返そうとした時、 「先輩その髪型の方が、絶対似合ってますって‼︎」 「へ?」 実は松野が真司の事を褒めていた事に気がつき、真司は気が抜けた。 「俺は好きです」 「‼︎」 真司は松野の発言に驚き、目を見開く。 「……あ、髪型です。髪型…」 松野が照れると、真司もつられて照れる。 「お前の言い方紛らわしい…驚いたじゃないか… イケメンの言い間違いは心臓に悪いんだぞ」 「……それは、先輩が悪い…」 「…ん?…」 「なんでもないです‼︎」 プイっと顔を横に向けた。

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