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第71話 蓮の過去⑧
キッチンに入ると、真司がコーヒーを入れソファーに座る蓮に手渡した。
「椿ちゃん、大丈夫そうだった?家にはもう着いた?」
真司は蓮のすぐ隣に座った。
「さっき家についたって連絡があった」
「よかった」
「……」
蓮はなかなか話し出さない。
「蓮、無理しなくていいよ。ちょっとびっくりしただけで、俺は本当に大丈夫だから」
真司はしっかりと蓮の方を向いた。
「……実は最近まで、自分がゲイだってこと隠してたんだ…」
蓮がぽつりぽつりと話始めた。
「初めて、自分がゲイなんじゃないかって気がついたのは、高校の時。でも、そんな事誰にも気付かれたくなくて、わざと女の子と付き合ってたんだ」
「うん」
真司は蓮の手の上にそっと自分の手を乗せる。
「俺は自分の保身のためだけに、高校の時も、大学の時も、社会人になってからも、何人かの女性と付き合った。その子達はみんないい子で『一緒にいたらもしかして俺も、この子のことを好きになるかもしれない』と思ったんだけど、やっぱりそれは違ってて…優しくしてくれた彼女たちを、俺の身勝手な感情だけで傷付けてしまった」
「うん」
蓮は震えながらも膝の上で握握りしめていた拳を、より強く握る。
「…椿とは異母兄弟で俺とは13歳差でなんだ。椿が物心ついた時には、俺はもう高校生で、その時には俺は付き合っている彼女がいたから、椿の中では俺は普通のお兄ちゃんだったと思う」
「うん」
「でも、もうこんな俺のために、彼女達を傷つける事も、自分を偽ることも嫌になって、もう女性と付き合うのはやたんだ。それからは誰にわからないように男性と付き合うようになってたんだけど、ある日、父にその事が知れてしまって」
「うん」
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