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天下無双のフェラ自慢

いつの頃からか、尺八上手と呼ばれるようになった。 はじめてしゃぶったのは13の頃、部活の先輩だった。 部室に二人きりになり、こらえきれずに押し倒し無我夢中でしゃぶった。 生まれて初めて自分のくちのなかに精が放出されたときの感覚を今でもまだ覚えている。 その後に先輩から何も追求されなかった理由は当時は分からなかったが、次第に自覚していくことになった。 おそらく、自分の尺八はとても具合がいいのだろうということを。 先輩を皮切りに、付け入る隙を見せた相手を片っ端から尺っていった。 その頃はただ自分のテクニックであっと言う間に相手が果ててしまうことが面白かったのかもしれないし、最初から尺八をすることが無上の喜びだったのかもしれない。 カモフラージュで異性とも交友しつつ、自分が尺八趣味があることが拡散しないように相手を選んで細々と経験本数を増やしていった。 社会人になるころには50本ほど経験しただろうか。 それまで貞節を守り続けてこれたのは、ひとえに自分の尺八の攻撃力の高さだと思っている。 何故かわからないがオレに尺られ果てた相手は腰が抜けてしまうらしい。 そもそもオレは自分のことは犯されたいという願望はもたない。 ただ、ひたすら、自分にとって無上の尺八を体感したい。 尺ることで感じる喜びに特化した存在でありたい。 そう願ってきただけだ。 社会にでれば学校の仲間をたらしこんで尺るという閉鎖的な狩猟環境を捨て、新たな竿の狩場を探さなくてはならなくなった。 おりよく普及し始めたSNSは実に効率よく竿を見繕うことができた。 だが、SNSそのものが持つ魔性はオレを見逃さず、いつしか尺八上手の噂が耳敏い連中に届きはじめることになる。 それまではこちらから獲物を見定め他言無用を条件に自分のために尺ってきたが、オレに尺られたいと名乗りでる人間が増えてきた。 最初はまったく相手にしていなかったが、ある日ふとした気の迷いで一件のオファーを受けてみた。 もちろん、オレも竿であればなんでもいいわけではないので相手を吟味しつくしたうえでの決断だった。 そいつは都内の大手金融機関に勤める同年輩の既婚者だった。 用意されたホテルの部屋で、相手の竿をじっくり見聞し事前の交渉に嘘がないことを確認したオレは挨拶がわりに尺ってやった。 3分も保たずに果てたそいつは息も絶え絶えにこういった。 「あなたの尺八は男を狂わせる。あなたのファンは確実に増えていくだろう」 その時は一時の気の迷いと笑ったが、そいつが自分の信用のもとに新たな竿をオレに紹介するようになり渋々尺ってやる人間を増やすと予言は的中することになった。 自分の喜びのために尺ってきたオレが、誰かに請われて尺るようになる。 想像もしていなかった。 己れの昏い満足のための暴虐が人を喜ばせるとは。 ともあれ、安心して尺ることができる竿を安定して入手できることと、仕組まれたシンジケートはオレに少なくない利益をもたらすことになった。 社会をやりすごす表の顔の裏に、尺八屋という新しい肩書を手にしたオレはこれからも自分の喜びのために尺り続け、オレに尺られることに喜びを覚える連中はお行儀よく自分の順番を待つことになる。 これは、オレが尺八屋として出会う一本一本の竿との戯れのストーリー。 そして、吐き出された精の数だけ記される切なくも可笑しい記録。

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