3 / 12

ケンジ8cm(45才)

オレは基本的には気乗りがしない尺り仕事は受けない。 エージェントもそれを承知しているからオファーの段階で選別する。 それでも、時にそのフィルタを潜り抜け筋の悪い依頼者との対決に臨まなくてはならないときもある。 待ち合わせは上野。 指定されたホテルはひなびた連れ込み宿。 場所がどこであろうと安全に尺れるならかまわないが、事前に提示されたプロフィールと突きあわせると微妙に筋の悪さが立ち上る。 もちろんエージェントの信用調査をクリアしたのだから払いや身元は間違いないのはわかっている。 これはオレの勘に過ぎない。 が、その悪い予感は往々にして現実となる。 指定された部屋のドアをノックする。 ガチャと扉が開きまず漂ってきたのは酒の臭い。 赤ら顔の男が充血した目で俺を舐めるように見る。 構わず部屋に入る。 べたっとした和室にせんべい布団が敷いてある。 枕元には吸い殻が貯まったスチールの灰皿といくつかの缶ビールの残骸。 「待ちくたびれちゃったよ」 男がもともとだらしなく緩んでぶらさがっていたネクタイを外しながら新しいタバコに火を点ける。 酒を飲むのはかまわない。 が、このような客は往々にして勃ちにそれが影響する。 オレはデリヘルではない。 時間を切り売りしてるのではなく尺ってナンボの尺八商売。 とはいえオレの事情と客の事情は別だ。 「シャワー、済ませてください」 にべもなく言い、オレもタバコに火を点ける。 「はいはい、規則ね」 なんとなくだが擦りきれた畳に腰を下ろす気にはなれず、掛け布団がめくられてもいない布団に上がり込むのも気が引ける。 立ったままタバコをすい男を待つ。 首にバスタオルをひっかけた男が部屋に戻る。 年相応に緩んだ身体。 ドス黒い顔は赤みが指している。 酒とシャワーのせいだろう。 肌の黒さはゴルフのせいだろう。 顔の黒さに比べ腹と左手の白さが不自然だ。 「始めます、お好きな格好で」 仁王立ちのオレににべもなく言われた男は 「サバサバしてんねえ」 といいながら布団をめくりあげ大の字に寝そべる。 股ぐらの間にこれもまた赤黒い男の竿がだらしなく垂れている。 男の足の間に膝をつき右手で竿をつまみ上げる。 まったく芯が入っていない。 まあいい。 フニャ竿をカチカチにさせるのもたまには悪くない。 予告もせずに男の亀頭をクチにふくむ。 「ほっ」 男がひょっとこみたいにクチを尖らせる。 クチに含んだ亀頭を中の下タでれろれろとねぶりまわす。 フニャ竿のままストロークはできない。 てっとりばやく芯を入れるために舌先でなぞるのではなく舌全体を使って揉みくちゃにする。 れろれろれろれろれろ、と声に出す。 徐々に男の竿に芯が入ってくる。 五分勃ち。 そのままカリに唇をひっかけクポクポ。 小刻みなクポクポで更に芯が入る。 7歩勃ち。 こういう客はクチから竿を離すと不平を漏らしやすい。 裏筋舐めや竿の根本ねぶりはやめておこう。 できるだけクチにちからを入れず、輪っかを維持したままカリを入念にクポクポ。 これをしばらく続けると、これはこれでたまらない。 「こ、こういうの、お、お、お」 だらしなく開いた男のくち。 執拗にクポクポ。 やがて本勃ち。 目測で8cm。 そのまま深めにくわえこむ。 ズドンと一気に振り下ろされた頭とずるりとしたくわえ込みに男が喘ぐ。 「おーきもちいおー」 ゆっくりとストローク。 「おーおーおーおーおー」 唇のすぼめ方を狭くして更にストローク。 こういう客は雰囲気を異常に大切にしがちだ。 わざと涎を絡ませてスッチャスッチャと音をたててやる。 出だし鈍かった男の竿も完全に芯が入りずんぐりとした量感をオレのクチに押し広げる。 長さのわりにぼってりとした竿だ。 こういう竿は前立腺やGスポットを攻めやすいからセックスには自信があるタイプかもしれない。 残念ながら尺りの世界ではそれは通用しない。 更に唇にちからを込めきつめのストローク。 あまりダラダラと尺っていては相手の気が緩む。 そろそろトドメを刺して終わりにしよう。 ストロークのピッチを上げる。 スッチャスッチャがスチャスチャスチャに変わる。 男の竿が膨れあがる。 ちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ。 がくがくと男の腰が震える。 「あー、だめえ」 吐き出される精。 射出ではなくドロリとしたお漏らし。 じんわりとオレの舌の上に広がったドロドロの精の感触を確かめ、ティッシュを探す。 オレは滅多なことでは飲精はしない。 上体を引き起こし 「以上となります」 と宣言し立ち上がる。 男は起き上がることもできないようだ。 そのまま無言で部屋を後にする。 フロントを抜けながらスマホに吹き込む。 「次は断ってくれ」 御徒町まで歩くことにした。 今のオレにはあの町の猥雑な空気が必要だ。

ともだちにシェアしよう!