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ワガママ王子と悪戯猫(24)
「……颯人?」
眩しい光が目をくらませて、全身を快楽に支配された。
悠が呼んでいるのは分かっているけど、俺の体は見えない糸で縛られて、自由に動けない。
腹かどこかがひくひくひくっと快楽の余韻で勝手に動いてる。
どのくらいの時間、余韻に支配されていたのだろう。
「なあ、颯人?」
「……ん」
目の前がようやくまともに見えるようになって、体も束縛から解放された。
「大丈夫か?やり過ぎた?ああもう颯人、イったきり戻らないから不安になるじゃねぇか」
「大丈夫……。ちょっと気持ちよすぎたみたい」
心配そうにのぞき込んでくる悠の焦り顔が思いの外愛しくて、無意識に悠の手をとって口づけた。
「大丈夫なら、そろそろ戻ろうぜ。創と幸にばれるとめんどくせぇから」
ほっと表情を緩めた悠さんが起き上がる。そろそろ私の口調は戻してもいいかな。
「あ、私着替えないと」
このシャツワンピースもどきを悠さん以外に見られるのは恥ずかしすぎる。
悠さんはいつの間にか着替えを済ませていた。
「じゃ、俺先行って適当にごまかしとく。颯人は後からゆっくりでいいぜ」
「そうですか?じゃ、私は着替えて落ち着いたら行きますね」
衣服を脱ごうと部屋のドアに背を向けて、シャツをたくし上げた。
「おーう、な、なんだよお前らっ」
ぎゃっという声と、どさどさという音がして、悠さんが驚いている。
俺はシャツをたくし上げて脱ぎながら、反射的に体をひねって悠さんの方を見た。
「「ぶはっ」」
「お前ら、まさか、聞いてたのか?!」
……ちょっと、状況が良く分からないけど、悠さんが開けたドアの隙間から、創くんと幸くんがなだれ込んできている。
でもって、俺は今着替え途中のほぼ全裸。
いや、ドアに対して背中を向けて立ってたから、局部は見えてないはずだけど。
ドアの方に半身を捻っていたわけで、上半身と、悠さんが好きだと言ってくれた脇腹から太ももにかけてのラインははっきりくっきり見られた。
え、ほんとに見えてたか分からないだろって?
見られたよ。
だって創くんと幸くんが俺を見つめたまま鼻血吹いてる。
「神様、ありがとう」
創くんか幸くんか分からない――いや、何となく創くんだと思う――が、神に祈りを捧げた。
◇ ◇ ◇
「お前ら、俺様の部屋を覗き見するなんて、良い度胸してんじゃねぇか」
創くんと幸くんを床に正座させて、悠さんが怒り心頭に達している。
「だってー……」
「だってもクソも無ぇ!」
あ、今反論しようとしたのが幸くんだな。だんだん分かってきた。
「夜中に悠が起きてったし、颯人さんもいつの間にかいなくなってるし、どうしたのかなって思うじゃん!!」
「思わねーよ!察しろよ!!」
「察したよ!それで見に来たんじゃん!!」
「来んじゃねぇよ!!黙って寝てろよ!!」
ちょっと二人が可哀想になってきた。
俺たちの行動が不審だったのは確かだし。
一緒に寝てたお兄さんが、夜中にいなくなったら、確かに気になると思う。
「悠さん、私たちが抜け出したのがいけなかったんですよ。創くんと幸くんはそれくらいで……」
「颯人!お前は人のことを言えねぇだろが!」
そう。
なぜか俺も正座させられてる。
ベッドの上だから双子よりはましな待遇だけど、なんで俺まで……。
「この浮気者が!」
「はい?!私がいつどこで浮気したっていうんですか?!」
「ついさっき、俺の目の前でだよ!」
は!?
「あのシャツ着てる姿を他の奴らに見せたら浮気とみなすっつっといたろ!!忘れたとは言わせねえ!!つか、むしろ全裸に近かったし」
「不可抗力です!私が着替えるタイミングで悠さんがドア開けたのがいけないんじゃないですか」
「「良いものを見せていただきました。ありがとうございます」」
双子が鼻にティッシュ詰めた間抜け面のまま、南無南無と拝んで見せる。
「テメエら今すぐここで颯人に関して全部忘れろ。できなきゃ忘れるまで俺が殴ってやる」
「ぼーりょくはんたーい」
「はんたーい」
創くんと幸くんが棒読みで悠さんに反抗する。
「うるせぇ!」
ああ、もう、何が何だか分からない。
とりあえず分かってるのは、これから愛すべき日常が始まりそうだという事だけだ。
それを思ってちょっと微笑んだら悠さんがまた怒った。
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