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第8話 Side:M **

 そうしていると、唐突に尻やら菊門に液体を擦り付けられて、身を丸めてしまう。しかし足は動かないため直接的な意味はない。下肢を眺めていた男がそれを指先で掬い、後孔に当てている。最初は指の第一間接だけを抜き差しして、次は更に深く、次は指を増やすと確実に後孔を慣らしていく。十分な量のローションのせいで指だけでぐちぐちと卑猥な音を立て始めるのが聞こえて、耳を塞ぎたくなる。それを楽しむように入れた指を左右に素早く動かしてわざとらしく音を立てられる。それでも萎えない自分は確かにそこにいる。屹立したまま自身はその刺激でも快感を拾っていた。 「もう入るだろ」 「んじゃ、さっさと入れてやるか。な、こっちのが欲しいもんな?」 「っ、は……、は、ふ、ぅ……、ゃ……めろ、や、め……」  それから指が引き抜かれ、口も解放される。それは終わりではなくて、むしろ本番の始まり。込み上げるのを飲み込んで拒絶を示すが、それで止まってくれるはずはなかった。男が場所を交代して、先ほどまで口内にあったものが今度は後孔に宛がわれる。男は両足の腿を抱き込んで体を引き摺り自分の方に身を引き付ける。挿入される感覚に身を捩って逃げようとするが、両手の枷が音を立てるだけだった。 「……っ、ん、……んッ、」  奥へと押し込まれる感覚に、咄嗟に唇を噛む。追い出そうと力を入れれば入れるほど塗りたくられたローションが逆に奥へと誘い込んだ。受け入れることを知っている体は今さら痛みなんて拾わず、ただ犯されているという事実だけを伝えてきた。せめて声は出すな、悦ばせるようなことはするなと頭に命じるが、また唇に性器を宛てられる感触があった。 「次はこっち入れてやるからさ、覚えろよ。おい、口」  意地でも唇を噛んで口に入れられるのを拒み続けると、挿入された方が最奥へと届くのも待たず、急に律動へと動きを変えた。内壁を擦られるような感覚は頭にピリピリとした刺激を与えて、体のぶつかる音と結合部の立てる音が突かれているという感覚をより強くした。声をあげさせようとしている。その隙に口を開かせるつもりなのだろう。それが分かっているから必死に口をつぐむ。 「意固地な奴、そんなに酷くされたいか」  瞬間、首を手が置かれる。その手は指を喉にあてて、力を籠めていく。反射的に手を動かすが、その手には当たらない。加えられた力が呼吸を途切れさせる。酸素が足りない。苦しい。唇を噛む力がだんだん震えていって、意識が遠退いていく。限界だった。ふと口を開いてしまうと、間髪入れずにすでに少し屹立しているものが口内に押し入ってきた。首に当てられた手は離されたが、息苦しくて仕方なくて。口を使うどころじゃなくなっていた。 「ん゛ッ、ぐ、ぅ……ん、ぅッ、んん゛っ!」  こちらが少し抵抗したからか、口内に入れられた性器は乱暴に動かされた。後孔のものも変わらず律動を続けていて、苦しくて気持ちよくて、ふと頬を熱いものが伝っていった。  口内を堪能していた方がやっと引き抜かれた時、顔は息苦しさと熱で赤く染まっていた。涙でぐしゃぐしゃになっているのが見なくても分かる。もう声を堪える余裕なんてなかった。律動に合わせて溢れる声を押さえる力なんて残ってはいなかった。ぼやけた視界で男二人が何か話しているのが見える。それが終わったかと思うと、急にガツンと奥を叩かれる。欲しいところを突かれて、体が震えてしまうのを面白そうに見ている。すると繰り返しそこを強く突き上げられて、快感で頭が白くなっていく。 「あぅッ! ぁッ、あ、んっ、そこ……そこ、やめ、ぁっ、あッ、ひぁッ!」  真っ正面から深く押し込まれて、奥の一点をひたすら貫かれる。こんな反応したくないのに。こんな声出したくないのに。快楽に正直な体はつい悦んでしまって。一度外れた箍は戻らない。激しくなる律動は絶頂の近さを示していた。 「ひ……ぃッ、あッ! や……、だすな、だすなッ! あ゛ッ、あ、っあ!」  そんな叫びも意味はなく、次の瞬間には生暖かい液体が後孔から溢れていった。ぐぷ、という音を立てながら突き立てられていたものが抜かれていく。しかし落ち着く暇はなく、まだヒクヒクと収縮を繰り返す後孔に次が添えられる。次は体を横に転がされて、片足の膝を曲げて横腹に押さえつけられる。先ほどとは違う角度で、より奥を狙った体位。好き勝手体を動かされるのに対して何も出来なかった。こちらに息をつく暇など与えず、また後孔を押し開かれていく。弱々しく首を振っても目にも止めてもらえなかった。 「あぁあっ、あ、ふ……、ぅ、ひぅっ、あっ、」  先ほどまでの挿入で緩くなって後孔は、次の挿入を簡単に飲み込んでいく。ローションに追加して精液も混じり、滑りも十分だった。そのため今度は慣らす間も持たず、最初から激しい律動が体を揺らしていった。微かにベッドが軋む音が、結合部からのぐちゅぐちゅという音は変わらず耳まで犯されている気分にされる。快感が腰と背中を伝っていく。しっかり奥を押し潰され、連続した快感が頭を蝕んでいく。 「はっ、あ、あっ、あっ! ひ……く、あ゛ッ、あぅッ!」 「は、こんなに淫乱だったんだな」  前まではこんなじゃなかったのに。犯されることの快感なんて知りもしなかったのに。フィンに快感を教えられて、ここにいる意味がそれしかなくって、溺れるようにすがっていった。こうやって軟禁されていても、側にいられるのことが単純に嬉しかったから。フィンのためなら、こんなことも出来た。フィンのため、だったのに。 「イき、そ、ぅあッ! あ、ァッ、ゃ……、イく、ぅ、──ッ!」  強い快感にびくりと背中が震える。前の方に触れられてないのに、それでも吐き出してしまう。もう体が快感を覚えていた。イった衝撃で後孔にも力を籠めてしまったようで、また後孔の中で何か溢れる感覚を感じた。挿入されていたものが引き抜かれる。二人ともイかせた。これでいいのだろうかと、ほとんど見えない目で二人を見ようとすると、また後孔に固いものが添えられる。 「ふ、……ぇ? な、に? もう……」 「お前一発で終わるわけないだろ。こっちは軍人だぞ? 溜まってんだよ」 「え……、んっ、ァッ……ま、て……まだ……あっ!」  やっと解放されると思ったのに、また男たちは場所を入れ替わって交代で挿入を始めた。聞いてない。一回犯させたらそれで満足すると思っていた。もはやどちらも激しい律動しか与えてこなかった。絶頂したばかりでほわほわする頭がまた快楽で埋められていく。頭はただ気持ちいいことしか分からなくて、突かれる度に声をあげてしまう。時折尻たぶを平手打ちされて締めさせられて、その痛みすら快感に繋がるようになっていっていた。

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