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甘い唾液 4
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「あれ?・・・これ何ですか?」
いつの間にかオレの家に置くようになった、黒いパーカーとジーンズに身を包んだ珀英が、夕飯後冷蔵庫を開けて、何やらごそごそして声を上げた。
いつも通り一つに結えている長い金髪が揺れた。
仕事を終えた珀英が当然のように夕飯を作り、同じく仕事を終えて帰宅したオレと一緒にご飯を食べたところだった。
オレは珀英の作ってくれた、体の温まるポトフとササミの大葉巻き、珀英の実家から送られてきたぬか漬けと、小松菜としらすの炒め物を食べて、ソファでごろごろしたところだった。
今日はこの冬一番に冷え込んで寒さが厳しい日だったから、暖房の効いた部屋と珀英のご飯で温まって幸せを感じていた。
以前は酷い偏食だったのが珀英のご飯のおかげで、だんだん好き嫌いがなくなってきたのを実感していたところに、珀英が冷蔵庫から取り出した製氷皿を見た。
見た瞬間。
あれに何が入っているのかを思い出した。
正直すっかり忘れていた。
そしてバレンタインまでまだ数日あることも思い出す。
「あーーーーー?!!待ってっ!!!」
「え?!・・・え?!」
オレが大声出したことで珀英がびっくりして、製氷皿を持ったまま固まっていた。
オレはソファから起き上がって、一直線に冷蔵庫の側にいる珀英のところまで駆け寄った。
珀英の手の中にある製氷皿を奪い取る。驚いて瞬きを繰り返す珀英。オレは珀英をきつく睨みつけた。
無理やり製氷皿を奪い取って、固まるオレ。
製氷皿に入っていたものを見て、固まる珀英。
冷蔵庫の前で二人とも固まって、この後どうしようかと考える。
長い沈黙。
「・・・見た?」
「え・・・いや・・・」
珀英が嬉しそうに口元が緩みながらも、気まずそうに視線をそらす。ほんの少し頬が赤くなっている。
しっかり見てんじゃねぇか!!
じーーーーっと見つめる。
珀英は視線をそらせては、オレの持つ製氷皿を見て、オレの顔を見て、また視線そらせて・・・を繰り返す。
もうどうしたって隠しようがないじゃないか。
オレは諦めて、盛大な溜息をついて。
つい・・っと製氷皿を珀英に差し出す。
珀英は大きな目を更に大きく見開いて、どう反応したらいいのかわからないというように、何故か頭を振って拒否する。
それはそれで、イラッとする。
「は?何?いらないの?」
「え?・・・いやその・・・」
「・・・せっかく作ったのに・・・」
ぷくっと頬を膨らませて、拗ねたように視線を外してそっぽ向く。
「いらないんならいい」
製氷皿をゴミ箱に捨てようとする仕草を見せると、珀英が慌ててオレの手から製氷皿を取り上げる。
「・・・いります!!」
必死に取り返して、胸に抱きしめそうな勢いの珀英を見て、思わずくすりと笑ってしまう。
そうそう。
その反応が見たかった。
そうやって必死にオレを求める珀英が。
欲しかった。
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