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第3話 伊吹と蒼 ③
もうすぐ4月だというのに、まだ肌寒い3月の終わり。
つい先日、伊吹と蒼は同じ高校を卒業したばかりで、この4月からは晴れて同じ大学の大学生だ。
2人の実家から距離があるので、2人は一つの部屋をシェアハウスすることになったが、この2人は恋人同士なので…
同棲といってもいいだろう。
寺前 伊吹はβ≪ベータ≫だ。
162センチと少し低い背丈に、ベータには珍しく目を見張るほどの透明感のある肌に澄んだ瞳。
可愛い顔立ちで伊吹が微笑めば、その場にいた人々は頬を赤らめるぐらいだ。
曲線美をもつ体つきは、可愛い中にも色気を醸し出していた。
が、本人としては女の子顔負けの可愛い顔立ちはコンプレックス。
そのせいか『可愛い』と言われることが大嫌いで、毛嫌いしている。
また、イケメンという人種も苦手だった。
自分にはない高身長と爽やかさとを、兼ね備えているからだ。
そんな中、出会ったのが、両親共にα≪アルファ≫で2人いる兄達もアルファ。
そして当人もアルファ。
アルファ一家の『東 蒼』だった。
彼は普通のアルファとは少し違っていた。
『自分は他の人とは違う』と人を見下したり、Ω≪オメガ≫を蔑んだりせず、
アルファもベータもオメガも分け隔てなく、接していた。
そんな蒼にどんな人も心奪われるのに時間はかからなかった。
伊吹もその1人。
だが伊吹が他の人とは違っていたのは、蒼とお近づきになりたいと思わなかった事。
ただ遠くから見つめるだけで幸せだった。
だがそれは、運命なのか偶然なのか……
その日は突然訪れた。
伊吹が二年生のある日………
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