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第4話 二人の出会い
「伊吹!避けろ‼︎」
体育の授業中バスケの試合があり、自分のチームが試合をする順番待ちをしていた伊吹は、仲の良かった友達との話に夢中になりすぎ、自分の方にボールが飛んできたのに気がつかず………
バンッ‼︎
伊吹の後頭部に強いボールが直撃した。
ん?
伊吹が状況を把握する前に、目の前がスローモーションに見え……
そのまま、暗い闇へと落ちていった。
ここは……
次に伊吹が目を覚ましたところは、保健室のベットの上だった。
えーっと…確か…
バスケの試合待ちをしてた時……
飛んできたボールが、頭を直撃して……
今、ここに至る…か。
保健室の天井を見つめながら、伊吹は記憶を辿る。
うん。
ちゃんと覚えてる。
打ち所は、悪くはなかったみたいだ……
少しずきんと痛む頭を押さえながら、伊吹が体を起こすと……
‼︎‼︎
誰⁉︎
伊吹が眠ってたベットには、一人の男子生徒がベットに組んだ腕を乗せ、その腕の上に頭を乗せて眠っていた。
その男子生徒を、よくよく見ると……
東 蒼 ⁉︎⁉︎
もともと綺麗な顔立ちだが、無防備に寝ている彼は、いつもにも増して魅力的だ。
保健室の窓から入る風が、蒼の艶やかな髪をたなびかせる。
綺麗な顔してるな〜。
綺麗過ぎて、やっぱり近付き難い……
東くんが起きる前に、ここから退散しようかな…
なるべくイケメンとは関わりたくなかった伊吹は、
蒼に気づかれないように、ベットからそーっと降りようとした時…
ん??
伊吹は自分の手を見た。
え?
なんで?
蒼は伊吹の手を、ギュッと握ったまま寝ていたのだった。
手をそーっと抜こうにも、しっかりと握られていて抜けない。
どうしよう……
もう一度、抜けるか試してみよう…
ゆっくりと蒼の手から抜こうとすると……
!!
今度は強くぎゅっと握り返され…
起きた⁉︎
恐る恐る蒼の方を見ると、寝起きだが、うっとりするほど美しいその顔で伊吹は見つめられ、蒼が甘い声色で囁く。
「ねぇ、伊吹くん。俺と結婚を前提に付き合ってくれませんか?」
「‼︎」
言葉の意味が理解できずに、伊吹が固まっていると、蒼は伊吹の耳元に顔を寄せ、
「お願い。付き合って……」
伊吹の耳元で囁かれたその言葉は、まるで呪文のように伊吹を痺れさせ、
「…はい…」
伊吹は考える間もなく答えていた。
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