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第29話 わかっていたのに… ー 伊吹sideー
あれから蒼は12時間以上、眠り続けている。
このまま、目を覚さなかったら……
「蒼……起きてよ……」
美しい寝顔で眠る蒼の髪を、優しく撫でる。
蒼の口から聞きたい。
嘘でもいいから、
『柚は俺の運命の番じゃない』って……
聞いたことがある。
運命の番が出会えば、すぐにわかるって。
強烈なフェロモンが発せられるとも…
でも蒼と柚くんは知り合いだったじゃないか…
その時はフェロモンに反応してなかったじゃないか…
もしかしたら蒼と一緒にいた時の柚くんは、まだオメガと判断できなかったのかもしれない。
だから、反応しなかったのかも…
分からなかったのかも……
とうとうこの日が、きてしまった……。
「わかってたのに、、な…」
伊吹は1人、呟いた。
結局、蒼は20時間ほど眠り続けてやっと目を覚まし、伊吹が『念のため、病院に行った方がいい』と言ったが、蒼は『大丈夫』と言って行かなかった。
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