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第33話 悪魔 ③ ー伊吹sideー
「……吹……伊吹……伊吹‼︎」
!!!!
「伊吹‼︎」
蒼に肩を揺らされて、伊吹は飛び起きる。
蒼‼︎
咄嗟に蒼の姿を探し、そして蒼の姿を見つけるとほっとし、蒼の胸の中に顔を埋めた。
またあの夢だ…
いつもの夢……
蒼の鼓動を聞いているうちに、伊吹の気持ちはだんだんと落ち着いてきた。
「伊吹、どうした?結構うなされてたよ」
優しく蒼が伊吹の頭を撫でる。
「ちょっと怖い夢をみた…」
伊吹はより蒼の胸に自分の顔を押しやった。
「どんな?」
「蒼が…蒼がいなくなる夢……」
「‼︎」
蒼は一瞬驚いたようだったが、すぐに
「俺が伊吹の前からいなくなるなんてこと、絶対にない」
優しい口調だが、きっぱりと断言した。
「俺の頭の中は、いつも伊吹の事でいっぱいだし、本当はどんな時でも、一瞬でも離れたくないんだ。それぐらい好きだ」
「…」
「伊吹は、俺が伊吹のこと大好きって知ってる?」
「…知ってる…」
だっていつも言ってくれるから…
いまだに俺からは言えてないけど……
蒼はまだ胸に顔を埋め、蒼を見ない伊吹の頭を優しく撫で続けていたが、その手がピタッと止まる。
そして、
「………伊吹は………伊吹は、俺のこと……好き?……」
蒼は今まで一度も伊吹に聞いてこなかった言葉を言った。
!!!!
伊吹は蒼から直接聞かれたことはなかった。
『俺のこと好き?』
と。
伊吹は初めて耳にする、蒼からの質問に動きが止まる。
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