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第34話 悪夢 ④ ー伊吹sideー

そんなの言わなくても決まってる! 好きじゃなかったら、 何も思ってなかったら、こんなに一緒にいたいとも、 あんな夢にうなされることもない。   「ねぇ伊吹……。俺のこと好き?」 ゆっくりと伊吹が顔を上げると、蒼は何かにすがるような… 今にも泣きそうな瞳をしていた。 蒼…… 伊吹の心にも、その蒼の気持ちが流れ込んできた。 もしかしたら俺は、 今言わないと…… 蒼に俺の気持ちを伝えられるのが、最後かもしれない。 絶対後悔する気がする…… 伊吹は一度下を向いたが、決心したかのように蒼の瞳を見つめたまま…… 『こくん』と、頷いた。 「!!!!」 蒼は驚きのあまり、目を大きく見開き、言葉を失い黙り込む。 「蒼のことが好き…」 「!!!!」 「いつも蒼のことばかり目で追ってしまうし、考えてしまう。もっと触れて欲しい。もっとキスして欲しい。もっと抱きしめて欲しい……。蒼のことになると、もっともっとが大きくなって、蒼のこと思うと胸がドキドキしたり、あったかくなったりするんだ」 伊吹は蒼に『好き』と伝えたことで、今まで心の中で思い続けていた事が言葉となり、口から溢れ出した。 「伊吹……」 「俺は蒼のことが好き。何よりも、誰よりも…好………‼︎」 伊吹がいい終わらないうちに、蒼はより伊吹をきつく抱きしめ、 そして伊吹の肩に蒼の頭を埋めた。 「………ってくれた……」 「え?」 伊吹の耳元で蒼が聞き取れないほどの小さな声で、独り言のように呟く。 「……初めて…いってくれた。伊吹が…初めて……」 蒼は涙声だ。 「泣かないで蒼。今まで言わなくて……伝えていなくて、ごめん…。こんな俺だけど、まだそばにいてくれる?好きでいてくれる?」 伊吹の肩に顔を埋めていた蒼が顔を上げると、いつも泣かない蒼の目からは涙が溢れていた。 「当たり前だろ…。いて欲しい…」

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