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第58話 ー接触 伊吹sideー

「伊吹は何もされなかったのか?」 「?何もされてないって何を?」 蒼の言っている意味がわからないと、伊吹は首を傾げた。 「なにもなかったら、いいんだ…。本当に良かった……」 蒼は目を潤ませながら伊吹の顔を見て、そして力強く抱きしめた。 「痛いよ、蒼……」 こんな力任せに抱きしめられたのは、初めてだ。 それに、蒼の鼓動が速い。 これって走ってきたからだよね… 「伊吹、これから何があっても孝司さんとは関わるな」 蒼は伊吹を抱きしめながら言った。 「え?どうして?」 「どうしても…。お願いだよ。うんと言って……」 耳元で話す蒼の声は、震えている。 「……。わかった。もう関わらないよ…」 「ありがとう。好きだよ伊吹。ずっと俺のそばにいて……」 「ずっと蒼のそばにいる……。だから安心してよ」 伊吹は蒼を抱きしめ返した。

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