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第78話 ーオメガ専門病院 ① 伊吹sideー

「伊吹くんは何回検査した?」 「最後にしたのは2年前で、検索したのは2回です」 「その結果全てベータ?」 「…はい。でも不思議だったんです。自分で言うのも変なのですが、自分がどうしてもベータとは思えなくて…何度も検査したのに、ベータって結果おかしいと思ってたんです」 「そうだったんだね。でね本題に入るんだけど…」 瑆はまた真剣な面持ちになる。 「今、伊吹くんからオメガのフェロモンが出てるんだ」 「フェロモンですか⁉︎」 驚き過ぎて伊吹の声が大きくなる。 「うん。今はヒートほどではないけど結構出てるかも…。伊吹くん自身は自覚……なかったみたいだね」 伊吹の驚きようを見て、瑆は確信したようだ。 「このままここにいたら、フェロモンの香りでアルファが来るかもしれない。そうなると大変なことになるから、フェロモンが落ち着くまで、僕が働く病院で休んでいかない?」 「‼︎」 知らない人の、知らない病院。 知らない病名を告げられて、オメガのフェロモンが出てるって言われてる…… これって不信感しかないはずなのに、瑆さんの言葉には不思議と、不信感をもたない。 「不信感はあると思う。でも信じて欲しい…」 「……」 信じるって… 「実はさ、僕も後天性オメガなんだ。だから、ほら見て。アルファ除けのチョーカー付けてるんだ」 瑆は首元に巻いてあるチョーカーを伊吹に見せた。 「襲われることはあっても、襲うことはないから心配しないで」 「…」 「病院にはアルファの同僚もいるけど、彼は完全にオメガフェロモン対策をしてるから大丈夫」 「オメガフェロモン対策?」 「定期的なラット抑制剤の摂取と、毎日のホルモン確認の為の血液検査。それに注射もしてるから」 「…どうして、そこまでされてるんですか?」 「だって、あそこの病院『オメガ専門病院』だから」 「え⁉︎オメガ専門病院ですか?初めて聞きました」 知らないことだらけで、伊吹は目を丸くする。 「普通の人は知らないと思う。でもオメガの人たちの中では有名だよ。ちなみに僕は専門医で、この世界では結構有名なんだ」 瑆は微笑んだ。

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