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第85話 ー伊吹くん…君は… 伊吹sideー
ホテルのような部屋にあるゆったりとしたベッドに横になると、そこには似つかわしくないと思えるような機材が運び込まれる。
はじめての経験、初めて見る機材、そして自分の体をエコーで診ないといけないぐらい変化があるのか…
俺の体、どうなっちゃったんだろう…
伊吹には不安なことしかなかった。
「今からジェルを塗るから少し冷たく感じると思うけど、痛くはないから安心して」
初めての体験で緊張していた伊吹だが、瑆の柔らかな声を聞くと安心する。
下腹部に瑆がジェルを塗ると、冷たさで伊吹のビクッとした。
瑆がエコーを当てると、その画面と先程した血液検査の結果であろう紙を見ながら、勇気と瑆が何やら話し、その画像を写真に撮る。
そして画面を伊吹の方を向けると、
「伊吹くん。これわかる?」
臓器のある部位を指差した。
直腸の途中にあり膀胱の少し上、それは小さな袋のようなものだった。
なんだろう?
悪いものなのかな…
「わからないです…」
不安そうに伊吹が瑆と勇気を交互に見つめる。
「まだ小さくて未熟だけど、子宮だよ」
「え⁉︎子宮⁉︎」
瑆が言った意味がわからないと、伊吹は驚きの目で瑆を見る。
すると、
「そう…。伊吹くん、君は後天性オメガだ」
瑆が言った。
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