83 / 194

第85話 ー伊吹くん…君は… 伊吹sideー

ホテルのような部屋にあるゆったりとしたベッドに横になると、そこには似つかわしくないと思えるような機材が運び込まれる。 はじめての経験、初めて見る機材、そして自分の体をエコーで診ないといけないぐらい変化があるのか… 俺の体、どうなっちゃったんだろう… 伊吹には不安なことしかなかった。 「今からジェルを塗るから少し冷たく感じると思うけど、痛くはないから安心して」 初めての体験で緊張していた伊吹だが、瑆の柔らかな声を聞くと安心する。 下腹部に瑆がジェルを塗ると、冷たさで伊吹のビクッとした。 瑆がエコーを当てると、その画面と先程した血液検査の結果であろう紙を見ながら、勇気と瑆が何やら話し、その画像を写真に撮る。 そして画面を伊吹の方を向けると、 「伊吹くん。これわかる?」 臓器のある部位を指差した。 直腸の途中にあり膀胱の少し上、それは小さな袋のようなものだった。 なんだろう? 悪いものなのかな… 「わからないです…」 不安そうに伊吹が瑆と勇気を交互に見つめる。 「まだ小さくて未熟だけど、子宮だよ」 「え⁉︎子宮⁉︎」 瑆が言った意味がわからないと、伊吹は驚きの目で瑆を見る。 すると、 「そう…。伊吹くん、君は後天性オメガだ」 瑆が言った。

ともだちにシェアしよう!