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第97話 ーー診察方法 柚編 ① 蒼sideーー
蒼は話した。
柚から聞いた話を、孝司が伊吹に接触してきたことも、自分の体調の変化も、伊吹から感じるオメガの香りも……。
全て話した。
蒼の話を最後まで黙って聞いていた和臣と学だったが、しばらく考えた学が口を開いた。
「気になることが二つある。一つ目が、柚くんは病院には行かせてもらえていない事。今の彼には専門的な診察が必要だ」
「…」
「だからといって孝司って奴にこの事を知られると、また別の方法で柚くんを閉じ込めようとするかもしれない」
「そんな…まさか…」
蒼は絶句した。
「柚は死にかけた。それを知ったら、真っ先に病院に連れて行こうとするはずじゃないんですか?」
それ以外の選択肢はないはずなのに。
「だからだよ。こんな事をしている弁護士を誰が信用する?」
「‼︎」
「これは私の予想だけど、孝司がもし医師に診せるとしたら、自分の信用できる医師に柚くんを診せると思う。だがその医師が専門医でなければ、設備が整っていなければ治療は無理だ。そうでなければ治療と言うより応急処置、それが精一杯だと思う」
「そんな…」
困惑する蒼に対し、学は静かに話す。
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