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第131話 理由 ①

柚と母親が一緒に暮らせなくなった理由。 それは母親が柚の実の父親から、幼い柚を抱え逃げ出した… そこから始まった。 柚の父親は、代々続く街で下請けをしている小さな工場を経営していた。 家は特別裕福ではなかったが、とても仲が良く笑顔の溢れる、温かな家庭で、 父親は母親が柚を妊娠した時は泣いて喜び、まだ母親のお腹が大きくなっていない時から、ずっとお腹の中にいる柚に話しかけていほどで、柚が生まれてからも、率先して家事、育児をし、『子煩悩なお父さん』として有名だった。 そんな幸せいっぱいの家庭が崩壊し始めたのは、柚が3歳になったころ。 不景気の煽りを受け、請け負っていた会社が倒産。 さらに追い討ちをかけるように、連帯保証人になっていた知人の失踪。 そして、医者からされた、父親のがん告知。 母親がコツコツ貯めた貯金は、父親の医療費と保証人になったための返済。 工場建て直しのため、父親は銀行に掛け合ったが門前払いを受け続け、次第に精神を父親は病んでいった。 そしてその頃から、父親は急に訪れる激昂とそれに対しての嫌悪感から酒とギャンブルに溺れ、その怒りの矛先を、まだ幼い柚や母親にぶつけるように、2人に暴力を振るうようになった。 そんな父親が暴力を振るい、正気に戻った時必ずすることがある。 それは泣きながら柚と母親を抱きしめ、 『俺が全部悪い。もう二度とこんなことはしない。だから俺を見捨てないでくれ…』 と懇願する。 そして、以前のような優しい父親に戻るが、しばらくすると、また人が変わったように暴れだす。 それを繰り返していった。

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