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第143話 蜘蛛と巣と蝶 ②

(あ、ここは夢の中だ…) 閉じられていたまぶたを、ゆっくりと開けた柚は、そう思った。 (またこの夢か……) 柚は周りを見た。 そこは上も下も、右も左も、 どこを見渡しても、どこまでも続く白の世界。 そんな世界に柚は1人、無重力の中のように浮いていた。 すると柚から少し離れたところに、突然光が差し込む。 柚は水の中を泳ぐようにその光に近づくと、その光も柚に近づいてきて、柚の掌の上で止まった。 「今日も見せてくれる?」 光に柚が尋ねると、『いいよ』とでも言うように、パァーッと光がより輝き、その残像がなくなった時、 柚の目の前に30㎝ほどのダイヤのように輝く、少し深みのある器が現れた。 その器の底から水が滲み出し、それが徐々に器の中に広がり、最後には器から溢れ出す。 するとその水に色がつき始め… 揺れる水面に映像が映し出され始めた。

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