148 / 194

第150話 蜘蛛と巣と蝶 ⑨

ここで、また水面は揺れ、 今度はなにも映らない、ただの水となり、輝く器は跡形もなく消え、 また白い世界には柚1人となった。 ここには孝司との楽しかった、幸せだった記憶が詰まってる。 でも今はどう? あの優しかった孝司は、どこにいってしまったの? あんなに皆んなに慕われて、 自分のことより、僕のことを考えて、いつも力になってくれていた孝司はどこにいってしまったの? ひかり輝く蝶のようだった孝司はどこにいってしまったの? 今、僕は孝司の作った蜘蛛の巣に引っかかった蝶みたいだよ。 もがけばもがくほど、糸は絡み、 動けなくなっていく。 本当は孝司も蜘蛛になんて、なりたくなかったはず。 だから、僕が孝司のそばで抱きしめてあげないといけないかもしれない。

ともだちにシェアしよう!