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第150話 蜘蛛と巣と蝶 ⑨
ここで、また水面は揺れ、
今度はなにも映らない、ただの水となり、輝く器は跡形もなく消え、
また白い世界には柚1人となった。
ここには孝司との楽しかった、幸せだった記憶が詰まってる。
でも今はどう?
あの優しかった孝司は、どこにいってしまったの?
あんなに皆んなに慕われて、
自分のことより、僕のことを考えて、いつも力になってくれていた孝司はどこにいってしまったの?
ひかり輝く蝶のようだった孝司はどこにいってしまったの?
今、僕は孝司の作った蜘蛛の巣に引っかかった蝶みたいだよ。
もがけばもがくほど、糸は絡み、
動けなくなっていく。
本当は孝司も蜘蛛になんて、なりたくなかったはず。
だから、僕が孝司のそばで抱きしめてあげないといけないかもしれない。
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