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第167話 新しい薬 ③ ーー蒼sideーー

薬を飲むと、やはり先ほどまでの感情の昂りは収まったが… 伊吹の隣で寝るのは危険だから、今日はここで寝よう。 蒼はソファーに横になり、掛け布団をかけ、寝ようとした時、 ーーカチャーー 部屋のドアが開き、目を擦りながら伊吹が部屋に入ってきた。 「蒼…どこ?…。蒼……?」 暗闇に目が慣れていないのか、まだ寝ぼけ眼なのか、足元をふらつかせながら部屋の中をうろつき始める。 「伊吹、どうした?」 ふらつく伊吹を支えると、蒼は伊吹をソファーに座らせた。 「蒼…どこいってたの?…俺を一人にしないで…」 伊吹が蒼に抱きつく。 「それは…」 伊吹からのフェロモンで、欲情しそうだから一緒に寝れない…なんて言ったら、伊吹の事だから絶対に『俺が薬飲む』って言い張るだろうな…… よほどのことでなければ、できれば伊吹に飲ませたくない。 俺が対応できる時は、俺が対応したい。 フェロモンに当たらなければ、なんとかなると思う。 「ちょっと考え事してて。伊吹、今日だけ俺と別々に寝られる?」 抱きついたままの伊吹の頭を蒼が撫でなる。 「嫌だ」 抱きつく腕の力を伊吹が強める。 「今晩だけ、な?」 「嫌。そんなことしたら蒼、いなくなってしまう」 「ならないよ、絶対」 「そんなのわかんないじゃん」 伊吹の声は涙声だ。 伊吹…… 「わかったよ、一緒に寝よ。ずっと一緒にいるから。伊吹が目覚めた時も、俺が側にいるから」 蒼が伊吹の髪にキスをすると、伊吹が安心したように笑う。 本当に守りたいよ、この笑顔も全部。 「ほらおいで。連れてってあげる」 「うん」 伊吹が嬉しそうに蒼の首に手を回すと、蒼が伊吹を抱き上げてベットへ向かう。 「おやすみ伊吹。大好きだよ」 蒼が伊吹の額にキスをすると、 「抱きしめて」 伊吹が甘える。 蒼が横になりながら伊吹を抱きしめると、 「おやすみ蒼。大好きだよ」 伊吹は蒼の胸に顔を埋め、蒼がどこにもいかないようにするかのように、強く蒼を抱きしめた。

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