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第175話 記憶 ② ー伊吹sideー

なんとか家に帰ってきたが、眠気と伊吹の甘い香りで頭がクラクラする。 鼓動も早くなってきて、早く薬を飲みたいが、伊吹の目があって飲めない。 俺の変化に気がついている伊吹が、『俺が薬を飲む』と、言い出したが、なんとかそれは阻止できた。 伊吹の体に負担はかけたくないんだ… 「蒼、つらいんでしょ?」 眉間にシワを寄せている蒼の顔を伊吹が覗き込む。 「大丈夫……。だけど、ちょっと菊池先生に電話してみるよ…」 もうこの前処方してもらった薬は飲めない。 だから学さんに処方してもらった薬を飲んでも大丈夫か? それとも病院に今から行ったほうがいいか? 相談したい。 携帯を取りに、蒼が立ち上がると… あ…やばい…… 蒼はふらつき、あと少しで机の角で頭を打ちそうになっていた。 「蒼‼︎」 倒れそうになる蒼を受け止めようと、伊吹が蒼のそばに駆け寄る。 「ごめん。ちょっと立ちくらみ。やっぱりちょっと大丈夫じゃないかもな…」 一度、診察してもらった方がいいな… これはちょっと、様子を見過ぎたな…… 蒼は額に冷や汗をかき始め、フラつく足元に力を入れようとした時、伊吹が自分の肩を貸そうと蒼の体に触れたとき、 !!!! !!!! 伊吹の体内から、一気にフェロモンが放出された。 今度は、もう無理だ‼︎ 伊吹と同じ部屋にはいられない‼︎ 「伊吹ごめん。ちょっと1人にさせ欲し……‼︎」 蒼が伊吹の身体を押しのけようとしたとき、伊吹の方から濃厚なキスをしてきた。 いつもの伊吹からは想像できないような、濃厚なキス。 蒼の唇を舌でこじ開け、蒼の舌と伊吹の舌を絡め取ると嬉しそうに微笑む。 自分の身体を蒼にピッタリとくっつけると、蒼の腰に手を周し、甘えるような眼差しで蒼を誘う。 「蒼、辛いんでしょ?俺が治してあげるよ…」 「え…?」 聞き返す前に伊吹が蒼の手を引き、蒼をソファーに座らせると、蒼の膝の上に伊吹が跨《またが》り… 「好きにしていいんだよ…」 蒼の耳元で囁き、そのまま首筋をツーっと舐め上げた。

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