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第183話 治療方法 ② ー伊吹sideー

「中星先生‼︎俺『オメガ化』治療がいいです!」 瑆が伊吹の両親に今後の治療スケジュールを話しをしているのを遮る。 「それだと今の伊吹くんの体への負担が大きいし、フェロモンの暴走も気になる」 伊吹が言うことを予測していたように、瑆話し出す。 「でも…」 「伊吹くん。ベータ化治療からオメガ化治療への変更はできるけど、オメガ化の治療を始めると、もうベータ化治療変更はできない。だからベータ化治療から始めてみてもいいんじゃない?」 瑆は優しく微笑む。 それでも… ベータ化治療している間に、蒼の気持ちが変わるかもしれない。 だから、早く、早く俺はオメガにならないとダメなんだ。 「伊吹、お父さんも中星先生が言われるように、まずベータ化治療で様子を見たほうがいいと思うぞ」 ベータ化治療を伊吹の父親も勧めるが、 「でも、俺はオメガ化治療したいんです。どうしても…」 伊吹の気持ちは揺るがない。 「伊吹、お母さんもベータ化治療の方が……」 母親が言いかけた時、 「俺、オメガ化以外の治療は受けない‼︎もしベータ化治療するなら、もうこのままでいい」 伊吹が言い切った。 蒼がいないこの先なんて、いらない。 「伊吹‼︎」 「父さん、自分の治療方法は自分で決めたい‼︎もう子供じゃないんだ‼︎」 伊吹が声を張り上げる。 「俺、オメガになりたいんだ…」 伊吹の目に涙がたまる。 『オメガになって、蒼の番になりたいんだ…』 この言葉が喉まで出かかっている。 でもこの言葉を言ってしまえば、確実に 『そんな動機でオメガになりたいなんて、許さない』って言われるに決まってる。 『オメガにならなくても、蒼くんと一緒にいられる』って。 でも、俺は臆病だから、約束が、制約が欲しいんだ。 絶対に蒼が俺の番になってくれて、ずっと一緒にいてくれるって… 蒼は優しいから、俺の頸を噛んだら、もし柚くんの元に行きたくなっても、俺と一緒にいてくれる。 たとえ気持ちがなくなっても、ずっといてくれる… その約束が欲しいんだ……。 「父さん、母さん。これはお願いじゃない。脅しだよ」 「‼︎」 「‼︎」 「‼︎」 驚きで伊吹の両親と瑆の目が見開かれる。 「もし無理矢理にでもベータ化治療するって言うなら、俺はいなくなるよ…。それでもいい?」 いつもの穏やかな伊吹からは考えられないような言い方。 父さん、母さん、ごめんなさい。 でも、これは譲れない…… 「伊吹‼︎そんなわがまま通ると思ってるのか‼︎」 父親がガタンっと立ち上がる。 「これからを左右することなんだ!だから自分で決める‼︎」 伊吹も一歩の引かない。 「伊吹‼︎」 伊吹の父親が声を張り上げた時、 「……わかりました…」 静かに瑆が言葉を遮り、 「伊吹くんの体がオメガ治療に耐えられるか、検査入院をしてもらってから、また決めるのはいかがですか?」 瑆が言った。

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