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第184話 治療方法 ③ ー伊吹sideー

伊吹の検査入院はその日のうちに手続きがされた。 日数は4日。 その間の伊吹の体の変化を記録するといったものだった。 「伊吹くん。これつけててくれる?腕時計みたいにつけてもらって、防水だから24時間つけっぱなしにしてね」 病室で2人になった瑆は伊吹に、液晶モニター付き腕時計のような機械を手渡した。 伊吹が腕に付けると、画面が緑に光、心拍計のようなものと、その下に数値が現れる。 「これフェロモン数値をはかるものでね、緑が正常。黄色がやや多め。赤は危険ゾーンだから、それを目安にして、30分に一回と、画面の色が変わった時の数値の記録を取って欲しいんだ。他は自由にしてもらって大丈夫だけど、フェロモン数値が安定していないから外出はしないでね」 瑆はフェロモン数値を記入するノートを伊吹に手渡す。 「伊吹くんがオメガ化治療にこだわるのは蒼くんのため?」 優しく瑆が伊吹を見つめる。 いってもいい? 本当の事。 言ったら治療止められてしまう? 「誰にも言わないし、治療方法は変えないよ。だから安心して」 まるで瑆は伊吹の気持ちを全てお見通しのようだ。 「…。蒼のためっていうより、俺のためです。俺が蒼といたいから…。蒼が俺と番になりたいっていってくれたから…。だから、俺がオメガになって、蒼がずっと俺のそばにいてくれるっていう約束が欲しくて…」 誰にも言えなかった言葉を言ってしまうと、胸につかえていた物がどっと流れ出したように、伊吹の目から涙が溢れる。 「その気持ちわかるよ」 瑆は伊吹の手を取り、ソファーに座らせた。 わかるってどうして? 「俺も後天性オメガだってわかった時、嬉しかったんだ」 「え?」 中星先生も嬉しかったってどういう事? 「俺の場合はオメガ化治療しか方法がなかったんだけど、俺の好きな人もアルファでね。俺がオメガになったら、もしかしたらその人、俺と番になってくれるかもって思って…」 「…。それで中星先生はその人と番になったんですか?」 「ううん、今は番じゃないんだ。これは俺の場合だから伊吹くんにはあてはまらないかもだけど、もし伊吹くんが今だけの気持ちでオメガになりたいって思ってるんだったら、少し冷静に考えた方がいい」 瑆はじっと伊吹を見る。 「それに蒼くんはどんな伊吹くんでも、そばにいてくれるよ。大丈夫。だから、この入院中よく考えて。オメガ化治療始めたら、もう変更はできないことをよく考えてね」 「…はい…」 伊吹が力なく答えると、瑆は伊吹の頭を優しく撫で、 「なんでも相談に乗るから、いつでも話しにおいで」 そういうと、病室を後にした。

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