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第187話 俺よりフェロモンって… ー伊吹sideー

ーートントンーー 伊吹の病室のドアがノックされる。 「伊吹、入っていい?」 あ!蒼だ‼︎ 返事をする前に、伊吹は部屋のドアを開けた。 「蒼、入って」 蒼が来てくれたのが嬉しいというように、ドアを開けた。 「へー、病院の個室とは思えないね」 辺りを見回した蒼が驚いた。 それもそのはず。 質の良さそうな絨毯が引き詰められ、ベットも大きいく、見舞客もゆっくりできそうなソファーがあり、バスルームは浴室付き。 窓は大きく作られていて外を眺めると、伊吹と瑆が初めて出会った公園の満開の桜がよく見える。 「高級ホテルみたいだろ?蒼も一緒にこの部屋で泊まったら、ちょっとした旅行みたいじゃない?」 伊吹が楽しそうに笑う。 「本当だな。ベットも大きいから一緒に寝られそう」 じゃあ… 伊吹の悪戯心に火がつくが、 「でも、泊まれないからな」 伊吹の言いたいことがわかっているかのように蒼が言い、伊吹の頭を蒼がぐしゃぐしゃと撫でた。 やっぱりダメか… でも、入院は4日。 4日も離れるなんて、寂しい… 「そんなに寂しそうな顔しない。入院っていっても4日だけだろ?すぐに一緒にいられるって。俺も伊吹と一緒じゃないのは寂しいけど、我慢するから伊吹も頑張って」 蒼が優しい目で伊吹を見つめる。 「それで、伊吹の治療方法決まった?」 「決まったよ。治療方法はね…」 伊吹は話し出した。 治療方法はベータ化とオメガ化とあって、自分はオメガ化の治療をすると… オメガ化治療を周りの大人達からは反対されていることを伏せて… 蒼に本当の事を言うと絶対反対されるし、蒼との約束が欲しいからって理由を知られるわけにはいかない… 俺のオメガ化治療は、蒼を繋ぎ止めるためのものだから。 「伊吹?大丈夫?」 無意識のうちに暗い顔になっていた伊吹のことを、蒼が心配する。 「‼︎大丈夫‼︎それより蒼、病院内探検しない?素敵なカフェもあるって母さん言ってたし」 伊吹が蒼に触れた時、 「‼︎」 蒼の表情が変わり、伊吹の時計型フェロモン検知器が緑から、急に赤へと変わった。 え⁉︎ どうして⁉︎ 蒼に触れただけだよ‼︎ 蒼は急いでポケットから薬を取り出すと、そのまま飲み込んだ。 紫色のカプセル‼︎ この前、蒼が飲みすぎてた薬‼︎ 「蒼それ‼︎…」 「大丈夫…、まだ今日飲んでなかったから」 薬を飲むと蒼の顔色が戻ってくるが、伊吹のフェロモン検知器は赤のまま。 伊吹も自分の薬に手を伸ばすが、 「俺はもう大丈夫だから、伊吹は飲まなくていいよ。それより、伊吹の数値下がったらカフェ行こうな」 蒼が伊吹に触れる。 蒼に触れて欲しい… でも、触れたら俺のフェロモン数値上がるの? もしかして、家で蒼が薬たくさん飲んでたのって、俺のせい?

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