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第190話 新たな出会い ② ー伊吹sideー
オメガ?
アルファ、ベータ、オメガの検査をして結果が確定できるのが大体15歳前後。
でも来夢くんは見た目5歳ぐらい。
なのにもうオメガ用のチョーカーつけて、俺と同じ測定器もしている。
どうして?
「お兄ちゃん、僕のお城で遊ぼう」
来夢がニコッと微笑み、
「おもちゃもお菓子も沢山あって、楽しいよ」
伊吹の手を引いた。
来夢の部屋は、伊吹の部屋とはまったく違っていた。
高級ホテルのようではなく、普通の男の子が好きそうな子供部屋だ。
壁紙は淡いパステルカラーの水色に、色とりどりのガーランドが飾られている。
ベットは子供用で車のシーツがかけられていて、
床に敷かれたラグにも車やロケットが描かれており、ソファーには可愛いくまやボールのぬいぐるみが置いてあった。
「ここ僕のお城なんだ。僕だけ特別なんだ。…僕だけ特別だから、病院《ここ》から出られないんだ…」
さっきまで笑顔だった来夢が悲しそうに俯く。
「僕、赤ちゃんの時からフェロモンでてて、それ、治すお薬まだないから、ずっと病院《ここ》にいないとダメってママが…。お友達いないから、ママ以外誰も遊びに来てくれない…。だから、お兄ちゃん‼︎僕とお友達になって!」
「え?」
「お友達になってくれたら、僕のお城で遊んでいいよ。おもちゃ全部貸してあげる!だから、僕とお友達になって‼︎」
来夢の目からポロポロと涙が溢れる。
すると…
甘い香り?
伊吹は咄嗟に自分と来夢の測定器の色を見ると、伊吹のは緑のままだが、来夢は緑から黄色に変わっていく。
今、来夢くんからフェロモン出てるの⁉︎
来夢の測定器の色が濃くなるにつれ、来夢は苦しそうに胸を押さえ出した。
大変だ!
すぐに先生、呼ばないと!
伊吹がナースコールのボタンを手に取ろうとすると、
「瑆おじちゃん呼ばないで‼︎」
伊吹の腕を掴んだ。
瑆おじちゃん⁉︎
どういうこと?
「あのお薬注射、気持ち悪くなるからきらい!注射したくない‼︎」
顔色が真っ青になりながら、来夢は伊吹の手からナースコールを取ろうとする。
注射、すごく嫌がってる…
でもこのままじゃ、大変なことになる‼︎
「来夢くん」
伊吹は来夢と同じ目の高さになるようにしゃがむ。
「俺、寺前伊吹って言うんだ。俺、来夢くんとお友達になりたいな」
優しく来夢に伊吹は語りかける。
「本当に?」
苦しそうに顔を歪めながらも、来夢は伊吹をじっと見つめる。
「本当。それにこれから沢山遊ぼう。楽しいと思うよ。だから今は元気になる注射、一緒に頑張ろ」
「…」
だまりこむ来夢に伊吹は
「大丈夫、俺もそばにいるから…」
いつも蒼が伊吹にするように、優しく来夢の頭を撫でた。
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