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第196話 勇気の一声 ー伊吹sideー
紅茶のいい香りがする…
あ、蒼もう起きて朝ごはんの用意してるんだ…
俺も手伝わないと……
伊吹が重い瞼をゆっくり開けると、
‼︎‼︎
天使のような愛くるしい寝顔の来夢の姿が、伊吹の目に飛び込んでにた。
そうだ!
俺、昨日から入院してて、夜中、来夢くんの部屋でお菓子パーティーしながら、なぜか蒼との結婚式用のドレス選びしてたんだ!
それで俺、そのまま来夢くんのベットで一緒に寝ちゃったんだ…
じゃあどうして紅茶のいい匂いがするんだろう。
伊吹はゆっくり体を起こした時、
「おはよう、伊吹くん」
「うわぁ‼︎」
ソファーに腰を下ろしながら紅茶片手に伊吹と来夢を見つめる瑆と勇気と目があった。
なんだか…中星先生、怒ってる?
「おはよう……ございます。あの、これにはちょっとした経緯がありまして…」
伊吹が瑆の様子を伺いながら立ち上がると、瑆は手に持っていた紅茶を机に置き、伊吹をじっと見つめ、
「伊吹くん!急に部屋からいなくならない‼︎本当に心配したんだよ!連絡ぐらいくれたら良かったじゃないか!」
あの優しい瑆が声を張り上げた。
「今、自分の体がどうなってるかわかってる?フェロモン暴発してるんだよ。それに昨日、自分がなんて言ったか覚えてる?オメガ治療じゃないと治療しないって僕達を脅したんだよ?わかってる?」
いつも朗らかな瑆の表情は怒りに満ちていて、伊吹はなにもいえずにいる。
「夜中、伊吹くんが部屋にいないって連絡来た時、どれだけ心配したと思ってるんだ!フェロモンが安定していないのに、ベータ化治療が嫌で病院を抜け出したんじゃないか?って…。フェロモンがいつ出るかわからないのに、もしアルファに見つかったら…なんて、どれだけみんな心配したと思ってるんだ!」
「瑆、それぐらいにしとけって…」
そばで見ていた勇気が瑆を止めた。
「メモだって置いてあっただろ?ま、ベットの下に落ちてて、気がつかなかったけど…。伊吹くんも無事だったし、今後気をつければいいってだけだろ?…伊吹くん、今後は必ず連絡!わかった?」
「…はい。ご心配をおかけして、本当にごめんなさい…」
迂闊《うかつ》だった。
俺は自分のことばっかり…
「と、まー優しい中星先生のお叱りも受けたし、俺からいいお知らせ」
そう言って勇気は伊吹にクリアファイルに挟まれた、書類を渡した。
「それ、伊吹くんと同じような症状の後天性オメガの人の治療事例。フェロモン暴発で不安定だったのを安定させながらオメガ化治療した事例もある。治療は精神的にも身体的にも苦しいと思うけど、それでもいいなら俺は協力する」
「本当ですか⁉︎」
伊吹の顔が希望で溢れてくる。
「勇気!勝手に決めるな。伊吹くんの体の様子を見ながら、治療はもっと慎重にしないと…」
「中星先生……、伊吹くんの『運命』にかけてみないか?」
話を続けようとしていた瑆の声を、勇気が遮った。
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