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晃の苦悩★1
*** 晃・side ***
───遊が・・・痴漢に襲われた。
遊から その話を聞いたとき、
びっくりして心臓が止まるかと思った。
助けてくれた人がいて、
最悪の事態にはならなかったらしいし、
遊も 意外にも平気そうに見えた・・・から
深刻にならないように
わざと平気なフリをした。
だけど・・・実際、
心の中はパニックだった。
その夜、助けてくれた人・・新見さんと
新見さんに呼び出された晴臣さんと
話をした。
晴臣さんも 昔、痴漢に襲われた過去があって、相当ひどいトラウマを抱えていた。
お互い好きなのに近づけない2人。
見てて もどかしくなるくらい。
もしかしたら遊も
痴漢がトラウマになってしまうんじゃ!?
って心配になった。
確かめたくて 遊を抱きしめたら
抱きしめ返してくれて・・嬉しくなった。
でも、そうしたら・・・俺は・・・
遊をもっと抱きしめたくなって・・・
“さすがに今日は ダメだ!”って
ガマンしようとしたのに出来なくて・・・
────結局シてしまった。
言い訳をすると
遊に誘われたっていうのが
大きいんだけど・・!
(あんなに可愛い事 言われて
ガマン出来るかってーの!)
───と、まあ・・・
エッチは無事 出来て ホッとした・・・んだ、
けど・・・!
今日は、お互い バイトがある。
今まで気にしなかったのが不思議なくらい
遊が・・・遊が心配っっ!・・・なんだ!
だって、
俺の可愛い遊がまた、襲われたら!?
その時、今回みたいに
助けてくれる人がいなかったら?!
遊は、空手やってたから強い・・けれど
狭いトイレの中じゃ思うように
抵抗できなかったみたいだし・・・!
ああああーっ!どうしよう!!
心配っっ!!
心配で 心配で・・・
仕事なんかしてる気分じゃ・・・・・
バコッ!
脳天に衝撃がはしった。
『・・・・い、いたああぁーいっっ!』
振り向くと店長が鬼の形相で立っていた。
『仕事をしろ、仕事を』
『て、店長ぉ・・、ひどいっ!』
『うっさいわ、仕事せんからだ。』
───あ、そうだ!
いい事 思いついた!
『店長ぉ、お願いがあるんですけど・・・!』
『あ?今か?今じゃないとダメなのか?』
店長が、嫌そうに顔をしかめる。
今は、すごく忙しい時間帯なのだ。
『すぐに終わります!・・あの!
遊をここで働かせてもらえませんか?』
『・・はぁ?遊を?・・何でだよ?』
『え、えーと 色々ありまして・・・・』
目を反らしながらそう言うと、
店長の目がキラーンッ!と輝いた。
───あ。聞いてくれる?
『よし、後で ゆっくり聞いてやる』
がっくり・・・
やっぱ、後か・・・
『今は仕事しろ』
『うぅ・・、はぁい・・・』
『働け、うら!』
『いっ、いたぁぁっ!』
渇を入れるためか、
思いっきり お尻を蹴られた。
ホールに戻りながら店長は、
楽しそうに黒い笑みを浮かべる。
くそぉ!
店長の鬼っ!悪魔っ!
俺だって、学習能力くらいあるっ!
この人に相談してもムダ、って
分かってる。
だけど・・・他に相談出来る人がいない。
今回だけは店長が頼みの綱、なんだ。
だってさ?
俺と遊が一緒にここでバイトしたら、
いつでも一緒に帰れるし
不安にならなくていいし
一石二鳥っ!じゃない?
俺って、天才♪
そう。
だから、後で もう1度
“遊をここでバイトさせて下さい!”
って店長にお願いしなくちゃ。
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