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晴臣の試練☆1

───ある日の昼休み。 英道から電話がかかってきた。 『よー、今日、いつものラーメン屋な』 『は?』 『6時半に店の前、よろー!』 『え?ちょっと待て・・・なに?』 ブツッ、 プー、プー、プー。 『は・・・・?』 返事をする間もなく切られた・・・ アイツめ・・・、 俺に用事があるとか考えないんだろうか・・ まぁ・・・ ないけどさ。 それより・・・誘ってくれた事が嬉しくて、 顔が笑ってしまう。 というのも ここ何日か、英道の仕事が忙しくて、 ゆっくり会えてなかったから・・・。 設計事務所に勤めてる英道は たくさんの顧客を抱えてて 締め切りが重なったりすると ほとんど 会えなくなる。 それでも・・・朝の通勤電車だけは 一緒。 どんなに忙しくても、 英道は俺と同じ電車に乗ってくれる。 俺のために。 だから、1日1回は必ず 会える。 ・・・絶対アイツには言わないけど ホントは すごく嬉しい。 英道は、 俺が 痴漢に襲われたのを助けてくれた。 まさか男に触られるなんて思いもしなくて ビックリしすぎて 最初に声を出せなかったことで 相手の行為が どんどんエスカレートしていって・・最後は公園に連れ込まれた。 そこに たまたま乗り合わせた英道に助けを求めたら・・追いかけて探してくれた。 英道がいなかったら、どうなってたか・・・ 今も 考えるだけでも 恐ろしい。 でも、それから 人に触られるのが怖くなった。 元々 人に触られるのは好きじゃない。 男でも やたらと肩を組んできたり、 べたべた触ってくるヤツがいるけど・・・ 昔から、そういうノリが嫌いだった。 英道は、俺が痴漢にあってから そうなった・・って思ってる・・・ だって、英道に触られると 「怖い」とか「嫌」とか思ってもないのに 電気が走ったみたいにビリビリして、 熱くなって、過剰に反応してしまう。 その度に英道が悲しそうな顔をするから 申し訳ない気持ちになる・・・ けど、自分じゃどうしようも出来なくて。 素直になれなくて、つい 強気に出てしまうこの性格も・・・とうにかしたいんだけど。 『急には変われないもんな・・・ 気長にいくしかないか。さ、仕事しよっと!』 夜には英道に会える・・・と思うと、 仕事もサクサクこなせて、上司にも褒められて、気分がいいまま終業時間を迎えた。 仕事が終わって、もう一度 英道から電話が かかってきた。 「今朝、痴漢にあった人を助けたんだけど そいつと食事をするから話、聞いてやって」 なんて 言われても・・ 俺・・・・・超 人見知りだっつーの・・・ 大丈夫かな・・・ まぁ、なんとかなるか。

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