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想い伝え、想い通ずる

「み、うみ……」 「ん? うわぁ! ルナ!」 ヒトに戻ったルナの顔色が悪くて、もう真っ青で、慌ててベッドへ寝かせた。 「大丈夫? どうした? まさか……三島さんに触られたから?」 「う、ぅ……ちょっと……あの人は深海(みうみ)の事がとても好きなんだね。それで俺を使えばもっと仲良くなれるかもって思ったみたい……悪い人じゃないけど、そういう打算っていうか利用してやろうって思いに当てられた……」 「断れば良かった」 「大丈夫。側にいてくれたらすぐ治るよ」 手首をクイっと引かれて、一瞬悩んでルナの隣に滑り込んだ。 これはあくまでルナの言う清涼な気でルナを癒す為であって、決して俺の邪な欲求によるものではない……のだぞ、と自分にしっかりと言い聞かせた。 ルナは今全裸だ。だから反応するなよ、頼むぞ愚息! 俺が不埒な事を考えて、もし万が一清涼な気とかいうのが濁ったらお前のせいだからな! 本当に頼むぞ、欲望及び愚息! 「頭、上げて」 「ん」 素直に頭を上げてくれたルナに腕枕をして、細い身体に腕を回す。 「どう? 寒くない? 少しは楽?」 「ん……心地良い……」 ルナの答えにどうやら気は濁ってはいないようだと安心した。 早く良くなれ〜と念を込めつつルナを抱きしめた。 「あの、さっき言ってたの……あれ、あれ……あの人を断るのに言ったの? それとも本当に深海は……?」 珍しく言い淀むルナがものすごく不安そうで、俺はすぐにピンときた。 「本当に本当! 甘いこぉひぃがお気に入りで、げえむが好きなルナが大好きなんだよ」 断る為の口実にルナをベースに架空の人物を作り上げたでまかせか、それとも自分の事か……。 神様でも不安になるんだな、と思うとやけに身近に思えた。 「ほんとに!?」 「本当! ルナが好きです。すごく、好きです」 「うぅ……俺この世の者じゃないのに?」 「うん。信じられない? 恋文でも書こうか?」 「えっ嬉し……俺もね深海が好きだったんだよ! 会った時からすごく優しくて、一緒にいたらあったかくて嬉しくて色んな事教えてくれて……深海が大好きなの!」 「ホントに? 良かった! フラれると思ってた! 俺にも無何有郷(むかうのさと)の話を聞かせて?」 「……比翼連理になれるかなぁ?」 なれるだろ、と髪を撫でるとルナが微かに笑ってグリグリと頭を胸に押し付けてくる。 いつか帰ってしまうかも知れない。けどそれまではこの世で一番の鴛鴦(オシドリ)夫婦でいよう。 「ほら、今は目を閉じて、早く良くなって? ずっとこうしてるから」 「ん。でも……」 「どうした?」 「……深海!」 いきなり顔を上げたルナはポカンとしている俺の唇に自分のを重ねてきた。 え、何? これキス……え、ヤバい、鎮まれ愚息! 「んっ」 差し込まれた小さな舌が器用に俺の舌を絡め取って、ぢゅっ、と吸い込んだ。 「治った」 「はぁ!?」 「直接気をもらった」 荒ぶる事も鎮まる事もできなかった中途半端な愚息に一瞬気を取られかけつつもルナの言葉の意味を考えた。 「なんだ……キスじゃなかったのか……」 「ほんのちょーっとだけ! もう平気! え? きすって何?」 「あー……キスは……えーっと接吻(くちづけ)」 そう教えるとルナは音がしそうな勢いで真っ赤になった。 「ちがっ気が欲しかっただけじゃないよ!? 誰にだってするワケじゃない! 深海としかしてないから!」 「そうなのか?」 「そうなのか? ってヒドい! 最初に接吻したのは深海の方なのに! 猫の時! お前が一番って! 忘れたの!?」 やった! ルナのファーストキス、ゲットー! って喜んでる場合じゃなかった。 俺を見上げるルナの目から涙が零れ落ちそうだ。 「ははははは伴侶となる相手としかしないもん!」 真っ赤な顔して、涙溜めて……あ、金眼の中に虹が見える……すげぇ綺麗……。 俺の中の神様のイメージって、ギリシャ神話の最高神のせいか、性に奔放ってイメージが強かったけど違うんだな、と見解を改めてルナに詫びた。 「そんな異国の神話の最高神なんか知らないよっ深海のバカ!」 とルナは唇を尖らせてぷんすか怒ってしまった。 人間の方がよっぽど奔放でした……ルナ、ごめん。 だからお願いです。 治ったなら服着てください。 どうにかなだめて服を着せて、とんがった唇が元に戻ったのを確認する。 髪を撫でて額にキスをすると、俺を見上げて口元をムズムズさせた後、我慢できなかったようでふにゃぁと可愛らしい笑顔を見せてくれた。 癒された。 「俺すっごい悩んだのに」 「何に悩んだ?」 「俺は無何有郷の住人で深海はこの世の住人で……俺は一緒にいたいって思ったけどそれは正しいのか、とか……」 いまいちルナの悩みが解らない。俺はルナがいたいと思うだけ一緒にいたいって思っていたから、正しいも正しくないもなくて、ルナが決める事だと思っている。 「深海さ、ココで俺を感じた?」 ココ、と掌を当てられた胸。 「……ルナが嘘ついてごめんって泣いた時、すげぇ悪いって気持ちが流れてきた気がした。あと、ルナが楽しそうだとなんかぽわーっとする」 「そっかぁ。さっきも深海、俺の声聞いたよね? 助けてってヤツ……じゃあ正しいのかなぁ……」 俺をおいてけぼりにして考え込むルナにおーい、と声をかける。 「あ。俺もね、深海が泣いた時胸が痛くて泣いちゃって、深海が嬉しいとぽかぽかして……だからやっぱり間違ってないと思うんだけど……」 「正しいとか間違いとか、俺にも解るように説明してよ」 「えと。こっちの世界じゃどうやって伴侶を決めるの?」 「好きだって思い合ってる相手と付き合って時期と覚悟が決まったら結婚するって感じ。まぁ中には結婚するか決める前に子供を授かって決める場合もあるし、まだ見合い結婚もあるよ。結婚って形にすらこだわらない人達だっているしね。無何有郷は違うの?」 「違う。魂が決めるんだよ。引き合って痛みや喜びを共有するんだ。だってずーっとずーっと長い時間を共にするんだよ? 魂が呼び合って引き合って、一つとなるべき相手と出逢う……だから俺の声はあの夜深海に届いたのかも……」 何やら俺の頭では理解するに難しい話がルナから聞かされている。 「あのーもし魂が引き合えば結婚しちゃうの? 例えば会ったその日に、とか」 「うーっなんて説明すれば良いんだろ? 出逢ってから初めて魂が動き出すっていうか……そりゃ快く思ってない相手になんて動かないよ〜」 神様にも嫌いな相手がいるって事かな。 「じゃあ、もし、ルナの言う事が正しかったら……?」 「んと、出逢った瞬間に魂が動いたって事……?」 ぽすっと胸に飛び込んで来たルナがえへへ〜えへへ〜と恥ずかしそうに笑うのがおかしくて。 「でも不安だったんだよ? 住む世界の違う二人の魂が呼び合うなんて聞いた事なかったし、それが俺や深海にどんな影響を与えるのか解らないし……今も不安」 ぎゅっと俺のシャツを掴む手に力が入ったのは甘えていんるじゃなくて、言葉通り不安なんだろう。 「コーヒーでも飲んで落ち着くか……」 何の気なしに呟くとルナが不思議そうに俺を見る。 「こぉひぃは落ち着くのに寝れなくなるの?」 解せぬ! と唸るルナにやはりカフェインの説明は必要かなぁと頭を掻いた。 「ルナ? コーヒー飲む?」 「飲む!」

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