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第一章 先生に、一目惚れ♡

 本城組の組長・本城 巌(ほんじょう いわお)は、にこにこと上機嫌だった。  相反して、その一人息子・本城 大翔(ほんじょう ひろと)は、不機嫌だった。  父が自分を前にして、こうも機嫌がいいのは決まって『あること』が原因だからだ。 「大翔、喜べ。新しい家庭教師の先生が、決まったぞ」 「ヤだ」 「会うだけ会ってみろ。きっと勉強する気が起きる」 「イヤだ」  大翔、と巌は立ち上がった。 「そこの難波(なんば)が、土下座までして頼んで引き受けてもらったんだ!」  難波の面子を潰す気か、と父はかんかんに怒っている。 (ああ、もう。クソだりぃ)  父がいくら怒ろうと構いやしないが、と大翔は後ろに控えている、難波 征生(なんば いくお)を見た。  征生は、大翔が小さい頃から面倒を見てもらっている、彼専任のボディガードだ。 「難波、どう思う?」 「明城大学の2年生です。成績は優秀で、大翔さんをきっと志望大学へ導いてくれると思います」 「明城大……」  ほんの一握りの秀才にしか門戸の開いていない名門である。  大翔は、そんな学校で学んでいる学生に、興味を持った。

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