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第十一章・3

 征生の土下座から始まって、共に大翔の成長を見守った。  夜の路上での事件。  あの時の手の温かさ、胸の温かさが、まるで昨日のことのように思い出される。 「征生さん、僕、これからもずっとあなたとお付き合いしてもいいですか?」 「そのことだが、楓」  お前はもう、本城組と。  ヤクザとは縁を切った方がいい。 「最近、大倉組がちょくちょく粉をかけて来る。あのチンピラどもがいい例だ。抗争になる前に、危険な目に遭う前に、俺とは距離を置いた方がいい」  そう征生は言ったが、楓は込み上げてくる想いを留めることができなかった。 「僕、あなたのことが好きなんです。もう、僕は征生さんから離れられません」 「楓、困らせてくれるな」 「ヤだ。やだよぅ……」  そこへ、征生のスマホが鳴った。  楓の涙を拭いながら、征生は片手で電話を取った。 「はい。……今からですか? ええ、大丈夫とは思いますが。はい、解りました」  通話を切った征生は、意外なことを告げて来た。 「組長からだ。今から、楓と俺とで来られないか、とおっしゃってる」 「僕も?」  話なら、さっきまでの宴席で散々したけどな。  そう思いながらも、二人はマンションを出て今一度本城の屋敷に向かった。

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