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その男、神宮寺 統⑤
「山田様も、ぜひともお召し上がり下さい。
はい......あーん」
手袋をキザったらしく外し、素手でクッキーを俺の口元へ。
なんでやねんと心の中で似非関西弁で突っ込みつつも、拒否ると神宮寺ファンの女子達 から非難されそうだったから渋々口を開けた。
「美味しいですか?山田様」
手についたクッキーの粉をペロリと舐めて、至近距離で妖艶に笑う神宮寺。
......悔しいけど、メチャクチャ美味い。
こくんと小さく頷くと、神宮寺はまたにっこりと微笑み、俺の頭を優しく撫でた。
「はぁ......今流行りの、料理男子ってヤツですか。
流石は神宮寺様、何をやっても完璧でいらっしゃる」
モグモグと口を動かしながら、もはや酔っ払い親父のようにネチネチと絡む俺。
神宮寺はそれに気を悪くするでもなく、少し考えるような素振りを見せ、静かに首を横に振った。
そして謎の執事プレイにはもう飽きたのか、いつもの口調に戻り答えた。
「ううん、違う。
俺普段は、料理もスイーツ作りもしねぇもん。
調理実習で、作って以来だわ。
なのにこの出来映えって、俺ってばマジ天才じゃね?」
なん......だと?
......それはそれで、やっぱムカつくんだが。
でもそんな風に考えているとは思われたくなくて、そうだね、とだけ答えた。
つまらなさそうに歪む、彼の形の良い唇。
でもそれすらも、ちょっと色っぽくて......相手は野郎だと言うのに、迂闊にも少しだけ見惚れそうになった。
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