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後書き・御礼(羽多より)
こんばんは。羽多です。
拙作「王子様はまだ恋を知らない」をお読みいただき、ありがとうございました。
お楽しみいただけましたか?「面白かった」一言でも、感想を残していただけると、とっても嬉しいです。(いただいたコメントは全て拝読させていただき、必ずお返事させていただきます)
お気づきになった方もいらっしゃるかもしれませんが、本作は「ローマの休日」にヒントをとり、旅先で偶然出会った二人が恋に落ちる物語。として創作をスタートしました。
主人公は日本人にしたかったので、冬馬 は「日本人だが、生まれ育ちが外国で、王子様のように裕福な大富豪の息子」という設定にしました。
お金持ちの多い国と言えば、中近東が真っ先に思い付きましたが、なんか、イメージ違うんだよな……。(これは羽多のフィーリングの問題なのですが)
じゃあ、天然ガスの産出国で、アフリカのどこかにするのはどうだろう? サバンナの自然に包まれて純粋に伸び伸び育った感じがして、いいかも!
というわけで、サバンナに近い「ケニア」を、冬馬の生まれ故郷としました。
実際は、お隣のタンザニアのほうが天然ガス油田は多いようですが、ヌーの大群とかが走り回るセレンゲティ国立公園は、タンザニアの首都から車で半日掛かる距離と判明したので、今回は思い切ってケニアに振りました。
このように冬馬の生まれ故郷を決めてから、ケニア情勢について調べてみると、アフリカは、性的マイノリティ(LGBT)に対して非常に厳しい地域だということが分かりました。
本作内で冬馬の口から語らせましたが、アフリカの多くの国で、同性愛は10年以上の懲役となる犯罪です。しかも、過酷な差別に晒されており、同性愛者だとバレてしまうと、勤め先を失ったり、殺されてしまうことすらあるそうです。
同性愛者は死刑?!アフリカの過酷なLGBT(性的マイノリティ)事情
https://www.borderless-japan.com/academy/support/21473/
アフリカで続く同性愛者への迫害
https://emb-media.com/mea/2019/11/14/34042/
「もう独りじゃない」中東や北アフリカよりLGBTの人びとの声
https://www.hrw.org/ja/news/2018/04/16/316835
そんな土地に生まれ育った冬馬が、もしゲイだったとしたら、自分の性的指向に葛藤するのは想像に難くありません。しかも、自分の生まれ育った国に対して強い愛着を持っていれば、なおのこと。自分の生まれ故郷、育んでくれたサバンナに強い愛着を持ち、その土地の開発に大きく寄与するエネルギー産業で活躍する父の姿に誇りを感じ、将来の夢と志す彼が、性的指向に悩む。
もし、「ローマの休日」のアン王女が、公務を逃げ出し一人の女の子としてローマを満喫する短い休暇で見知らぬ男性と束の間の恋に落ちたように、冬馬の短い訪日の間に、彼の悩みを理解してくれる男性と出会ったら……。
同時に、ケニアの象徴的な植物として、『星の王子さま』に登場する、星を破壊する樹木のモデルになったとされるバオバブが存在していることを知り、孤独に世界を旅する中で大切なものに気付く王子と、冬馬の姿が重なりました。
王子・王女の姿を冬馬に重ね、彼を「王子様」と喩えました。
ここからは主人公二人のネーミングについて語ります。
冬馬は、アフリカ生まれですので、「海外でも日本でも通用しそうな名前」が必須条件でした。
冬馬(Thoma)は、キリストの十二使徒トマス(Thomas)に由来します。遠くインドまで布教活動に赴き、インドで亡くなったとされるトマスのように、「日本とアフリカの架橋になって欲しい」という思いを両親が込めたはずです。
雄吾 も、「海外でも日本でも通用しそうな名前」からチョイスしました。 ”Hugo”という綴り、フランスでは「ユーゴ」「ウーゴ」と読まれますが、ドイツでは「ヒューゴ」になります。同じゲルマン語圏のアメリカでも同様。雄吾は商社マンですから、世界中で通用するように、パスポートの表記を”Hugo”としていた。なので、最終話でも同僚から「ヒューゴ」と呼ばれていて、冬馬は会うまで雄吾のことだと気付かなかった。というオチです。
由来・意味は、ゲルマン語の言葉では”esprit”「精神、心」、 “pensée”「思い」 または “intelligence”「知性」を意味します。恋にも仕事にも情熱と知恵を使う彼にピッタリですね。(自画自賛)
きっと、これからも、二人が乗り越えなければいけない困難は多々あるでしょうが、サバンナを照らす太陽のような笑顔と王子様のような高い志で、乗り越えて行ってくれると信じて筆を擱 きます。
なお、本作に登場する企業名や役職、個人の名前は全て創作であり、現実のものと一致していた場合は、それは単なる偶然であることをお断りします。(ケニア・エナジー・カンパニーという会社はあるかもしれませんが、おそらく国営で、外国人がCEOという可能性は低いと思いますが、そこはフィクション・おとぎ話ということで御容赦ください)
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