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 すっぽーん。  屈強な空手部相手にも、アウトローなボクシング部相手にも、すんでのところで回避してきた俺の最大コンプレックス。  最後の砦であるネコちゃんパンツが、勢いよく足首までずり下げられた。 「わーお!これはモンキーバナーナ!」 「かわいいぞ。小さくまとまっていて、下品さがない。天樹の体はどこもかしこも奥ゆかしいッ」 「え、これ写真いいんですか?俺らちょっと酷すぎません?大丈夫ですかね?捕まりそう…」  三者三様の反応にわなわなと怒りに震える体。  ふざけんなよ。  俺の花々しい人生計画を踏みにじり、一番気にしていることを笑い飛ばしただけでなくモンキーバナナなどと揶揄しやがって。 「おまえら!許さねえからなッ!呪ってやるからな!絶対の絶対に泣かすッッ!」  そう強がって喚いたところで未だ劣勢。  股間は丸出し。向こうには脅しのスマホもある。  入学してすぐから絶体絶命。  俺はなす術なく、ぶらぶら体を揺するだけだった。 「呪うだって?そりゃいい。ますますウチのマスコットにぴったりだ。森羅万象の呪詛神仏を研究することが、我々の活動目標だ」 「スマートでキュートに呪っちゃう、それが僕らのモットーだからね!やっぱりキミは逸材だよ」  惣之助が俺の股間に話しかける。  多感でデリケートなお年頃の俺のそこを、まじまじ観察するんじゃない。    それから後ろの腕力ゴリラメガネは、いつまで俺をこうしている気だ。   「モンキーバナナ、剥いちゃおっかなあ」  ほんの少し顔を出す先端に、惣之助の指がちょん、と触れた。  さらには、ちょん、ちょんと突かれる。 「やめろよッ!離せ、バカヤロお…」 「かわいいのに。自信持ちなよ。まあ、そこまで嫌なら仕方ないよね、かわいそうだもん」  なぜか残念そうにため息を吐く惣之助。  寅吉もようやくスマホを下ろした。 「じゃあさ、代わりにお尻の穴見せてよ」  にっこり。  じゃない。  ふざけんな。バカじゃないのか。 「そんなとこ、見せるわけないでしょ!」  振り上げた爪先が、惣之助の側頭部へ図らずともサイドキックをお見舞いした。

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