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Ⅰ 世界よ、我に跪け!②
ディスプレイの中で、男は恭しく跪いた。
「お帰りなさいませ。総帥」
「挨拶はいい」
ここは、悪の秘密結社ルフラン本拠地である。
外見を取り繕うものは要らない。
銀色の髪に指を通した。
この髪色は、地球では目立ちすぎる。
両耳の上から伸びる、鱗上の長いヒレも。
陶磁のように白く艶やかな長い指を彩る闇色の爪も。
この地球という星では、良くも悪しくも目立つのだ。
「我らがここへ来て、どれだけになる?」
「グレゴリオ歴にて2年1ヶ月。星歴でちょうど3年です」
「『血のヴァレンタイン』から3年か」
あの日……
俺達の艦隊は銀河系の調査を行っていた。
一連の調査を終え、本国に帰港しようと艦隊が反転した時。
その瞬間は、予告なく訪れた。
我が艦隊は宇宙デブリに囲まれていた。
おびただしいデブリだ。
核という名の有害な……
何光年と宇宙を漂っていたデブリは損傷が激しく、装甲は既に割れていた。
臨界に達した核デブリが爆発し、核融合が発生。
デブリ核爆発が連鎖を起こし、暗い宇宙は真っ赤な炎に包まれた。
緊急アラートが鳴り響く。
『回避不能。総員脱出せよ!』
俺は命令した。
だが……
核の炎の中で、どこに逃げればよいのか。
「あの時……」
第7空挺師団が己が身を賭して、死地からの突破口を開いてくれなければ。
「俺は死んでいた」
後に、あの核デブリは地球という惑星が廃棄したものであると突き止めた。
「これは、我が国への宣戦布告である」
核を宇宙へ流したのだ。
相応の報いを受けねばならぬ。
だが、辺境惑星・地球に戦力を削げるほどの戦力は本国にはない。
ゆえに、俺は志願した。
「これは特務だ」
「はっ」
「戦力がないなら現地調達すればいい」
「御意」
フフ……
「我が頭脳をもってすれば辺境惑星攻略など造作もない事だ」
そうさ。
さぁ、歌え!人類どもよ。
お前達の滅びの歌を合唱せよ!
お前達を滅亡へと導く忌まわしき兵器は、今、煌々と夜を讃えて輝いている。
大空とお前達が呼ぶ宇宙。
お前達の頭上に輝く……
「月を地球に落とす」
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