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第6話
閉店後のカフェの外で、先程から中の様子をちらちらと窺う人影が見え隠れしている。
「ほら庚くん、もう今日の仕事は終わったんだからそろそろ撤退しようか。迎えが来てる」
「え、迎えってなんだよ? 誰も迎えに来る予定なんか……」
禅一が入口まで歩いてゆきドアを開けると、すっかり夜更けとなった外の闇の中に七尾の姿を発見した。
「――あ、俺は不審者では」
「わかってますよ、七尾さん。どうぞ中へ」
柔らかく笑んだ禅一は七尾を店内に招き入れ、再び入口を閉ざす。
「あ、え。七尾……なんでここに」
「お迎えにいらしたんじゃ? そうですよね、七尾さん」
「えー……と、まあ、あの」
「僕そろそろやることあるんで、庚くん連れて帰ってください。この人さっきから、困った発言しかしなくて」
「ちょ、禅一さん! そういうこと言わないでくれよ。大体七尾は……つまんねえことで拗ねる小さな奴で」
「つまんねえことって! 津田おまえな」
「ああもう……二人とも帰る。僕を巻き込まない。どちらかの家でやってください」
既に喧嘩を始めそうな二人に禅一が割って入る。なんでこんなことをしなければならないのかわからないが、ここで揉め事を起こされても迷惑なだけだ。
「ほら、庚くん。よーく仲直りして、七尾さんにめちゃくちゃにされたらいいよ。僕なんかのとこにいる場合じゃない」
「うわ、セクハラ!」
「どの口が言う……」
ぼそっと呟いて、庚の荷物を押し付けて店から二人を追い出すと、やっと静けさが戻った。
「やれやれ……なんか疲れた」
禅一は冷めてしまったコーヒーを淹れ直し、電子タバコで一服してから店内の照明を落とした。
傍観者であるのは楽だし、一人の夜は決して嫌いではなかったが、やはり寂しくもある。
こんな時傍にいてくれる人がいたらとも思えたが、誰も傍に置かないのを選んだのは自分自身だ。仕方なくビールを飲みながら借りてきた映画を観て、仲直りしたかな、などと考えながら夜をやり過ごした。
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