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第2話
「……ゅん、しゅん?」
隼ってば、と軽く肩を叩かれ顔を上げると、前の席に幼なじみの唯が俺を覗き込んでいた。
「……?あれ、俺…」
「なに寝てんの。隼が次の中間試験で成績落とせないから勉強教えてって言ってきたのに」
怒っていても綺麗な唯の顔をぼんやり見ながら、ああそういえば再来週の試験勉強してたんだった…と現状を思い出した。
ごめん、と謝って周りを見渡すと教室には俺と唯しかいなかった。
「あれ、さっきまでもっと人いなかった?」
「もうみんな帰ったよ。隼が寝てた10分前に最後の女子ふたりもカラオケ行くとか言って出ていったし」
そんなことより次の問題解いて、と唯は話を切り上げて、数学の問題集の⑤と書かれている問題を指差した。
唯は、顔はまつげも長くて中性的な綺麗さがあるのに、その手や指先は男らしく良い意味でごつごつしている。
そんなことを意識してどきっとしたけれどすぐに頭から追いやった。
ふたりっきりの静かな教室で些細なことまで意識しだしたらきりがない。
問題に集中し悩みながらも答えを出してノートを唯に見せた。
「………うん、考え方は合ってる。使う公式もこれで合ってるよ。ただ最後ケアレスミスしてる。なんで最後の引き算で間違えるの、もったいない」
言われたところを見直すと確かに最後の引き算を間違えていた。そこだけ計算し直してもう一度答えを出すと「そう。これが正しい答え」と赤ペンで丸をくれた。
「じゃあ、次の問題。これだけやったら今日はもう帰ろうか。どんどん天気悪くなるみたいだし。雨がまだ降ってないうちに」
唯の言葉に頷いて次の問題を解くと、次は間違わずに一発OKをもらえた。
じゃあ帰ろう、とふたりで支度を始めた途端雨がぽつぽつと降ってきた。
親の言う通り傘持ってきて良かった、と靴箱で靴を履きクラス合同の傘入れから傘を出そうとして、ん?と思った。
朝置いたはずの、自分の傘がなかった。
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